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中国政府のIT企業締め付け強化で中国株への影響も、中国の経済成長がダウンするリスクも

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 3日の香港株式市場で、テンセント・ホールディングス(騰訊)株が一時11%近く急落した。国営新華社通信系の国営紙・経済参考報はゲームを「精神的アヘン」「電子薬物」だと批判し、テンセントはその後、12歳未満の子供に対する全面的なゲーム禁止に踏み切る可能性を示した(3日付ブルームバーグ)。

 先月24日にも中国の規制当局はテンセント・ホールディングスに対し、音楽の著作権について独占的な契約を結ぶことを禁じた。27日にテンセントは、メッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」の新規ユーザー登録を停止すると発表していた。

 中国国務院、学校教科の個別学習指導を提供している全ての機関が非営利団体として登録され、新たな営利団体としての設立を禁止するなどの新規則を地方政府に通知した。これによって1200億ドル規模の民間教育会社は甚大な打撃を受けるとの見通しも示された。

 大手配車サービスの「滴滴出行(DiDi、ディディ)」は6月末にニューヨーク証券取引所でIPO(新規株式公開)を果たしたが、上場からわずか2日後の7月2日に、中国のサイバースペース管理局(CAC)は中国全土において、DiDiの新規会員登録の停止、4日には同社のアプリケーションの削除、さらに9日には同社系列のアプリ25件全体の削除を命じた。

 2014年に上場したアリババもすでに規制対象になっている。アリババ傘下の電子決済サービス「アリペイ」を運営するアント・グループの上場が中止に追い込まれた。こちらも中国政府による締め付けの一環とされている。

 あきらかに中国政府による特にインターネットを介するようなハイテク企業への対応に大きな変化が生じていることは確かである。中国は1978年あたりからの市場経済への移行をきっかけに、IT革命にうまく乗ったこともあり、高度な経済成長を可能にさせた。

 その立役者達に対して今度は規制を強化することになった。規制を強化せざるをえないほどに大きくなり過ぎたこともあろう。DiDiのニューヨーク証券取引所への上場などは中国政府の裏をかいて行おうとした側面もあり、目を付けられたこともあろう。

 いまのところハードの企業に対しては目立った締め付けはなく、インターネットに絡んだ企業などソフト重視の企業の締め付けが強化された格好となっている。これはいずれハードに関わる企業にも及ぶのであろうか。

 この中国政府によるハイテク企業の締め付けは、これまで中国の高度成長を支えた企業の体力を削ぐ格好となる。これは中国全体の経済にも当然影響は出てくる。中国のGDPはいずれ米国をも抜くとされているが、今回の中国政府の動きからみて、本当にそうなるのかやや疑問となる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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