米労働省が10日発表した5月の消費者物価上昇率は前年同月比5.0%となり、2008年8月以来約13年ぶりの高さとなった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数の上昇率は5月に前年同月比3.8%とこちらは1992年6月以来の伸びとなった。

 物価上昇はかなり広範に見られ、特に中古車や家庭用調度品、航空運賃、衣料品のコストが着実に伸びた。全体の前月比上昇分の約3割を中古車・トラックが占めたと、米労働省は説明した(10日付ブルームバーグ)。

 前年同月の落ち込みの反動という側面があり、前月比での伸び率は4月に比べると鈍化していた。

 FRBは前年の低迷の反動などによる「一時的」な要因による物価上昇との認識を建前上はまだ変えていない。

 これを受けて米国債券市場ではいったん米債は売られ、米10年債利回りが一時1.53%に上昇した。しかし、すぐに買い戻されて1.43%に低下したのである。

 米長期金利が上昇することに掛けていたショートポジションを買い戻してきた可能性がある。ここにきて米長期金利の上昇は抑制されており、チャート上からは買い戻しが入りやすい状況となっていたことも影響したか。

 10日にはECB理事会も開催されていた。金融政策については現状維持を決定し、会合後の会見でラガルド総裁は、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の出口については、いずれ討議されることになるが、現時点での討議は時期尚早だと発言していた。つまりPEPPの検討はタイミングが重要との認識を示したものと思われる。

 これはFRBに先駆けて行うと為替市場に影響を与えるためとの見方もあるが、市場の動揺を抑えたいためでもあろう。

 これはFRBも同様のようであり、少なくともFRB議長本人がテーパリング(買入資産の縮小)についてコメントするのは控えている。こちらもタイミングを重視し、市場にある程度織り込ませてからとなりそうである。これもポジション調整から米債が買い戻された要因となった可能性はある。しかし、こちらについては15日、16日に開催されるFOMCで何かしらの示唆がある可能性はありうる。

 これらに対し、今月にイングランド銀行のチーフエコノミストを退くアンディー・ホールデン氏は、「現在のセントラルバンカーはインフレ加速を抑える行動に出なければ、ひどい過ちを冒すリスクがあり、過去数十年で最も危険な局面にある」と発言していた。

 この意見に同調するセントラルバンカーはそれなりに多いとみられる。慎重を期すのも良いが早めに行動を起こすことも重要である。まもなく要職を退くので、言いやすかったこともあろうが、ホールデン氏の忠告にも耳を傾けるべきではなかろうかと思う。