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ビットコインが再び急落、17日の東京株式市場も下落したが、バブル相場を連想させたのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 17日の東京株式市場では、14日の米国株式市場の上昇を受けて買いが先行していたものの、日経平均は寄り付き後は急速に上げ幅を縮小させてマイナスに転じた。東京時間の米株価指数先物も同様に下落していた。

 新型コロナウイルスの変異株が国内で広がるなか、国内の経済活動の正常化の遅れが意識されたとの見方があった。しかし、特段、悪材料となるようなものが出たわけではなかった。台湾株の下落などは気にされていたようだが。

 ただし、別の市場で気になる動きがあり、もしかするとこれがひとつのきっかけになった可能性もないとはいえない。ビットコインである。

 12日にビットコインは一時5万ドルを割り込んでいた。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同社が仮想通貨ビットコインを利用した車購入を停止したことを明らかにしたのが要因となった。

 マスク氏はツイッター投稿で、ビットコインを生み出す「マイニング(採掘)と取引で化石燃料の消費が急激に増える」との懸念を理由に挙げた。しかし、これは何を今更感が強い。この程度のことは当然、マスク氏をはじめテスラ関係者も認識していたはずであるが。

 どうしてこのタイミングでこのような発言をしたのか。米消費者物価指数の上昇による米長期金利の上昇から、ビットコインを含めたバブル相場の終焉を意識した可能性もありえた。

 マスク氏がツイッターでビットコインなど暗号資産のことをつぶやきはじめてから、ビットコインの価格はマスク氏の言動に翻弄されるようになった。

 そして、米国時間の16日遅くにビットコインは一時4万5000ドルを割り込んだのである。今度は保有ビットコインをテスラが売却するとのツイッター投稿に対し、イーロン・マスク氏は同意したと受け止められる反応を示したことが要因とされた

 ニューヨーク時間16日午後5時51分(日本時間17日午前6時51分)時点は4万5270ドルと、14日の終値から約4000ドル下げた水準となっていた(17日付ブルームバーグ)。一時、2月以来の安値の4万2185ドルまで下げていた。

 イーロン・マスクのビットコインへの投資は「仮想通貨」の将来を見据えてとの見方もあった。しかし、イーロン・マスクのツイートで翻弄されるビットコインについては相場操縦も疑われかねない。

 17日はビットコインの急落によってテスラへの影響も危惧されて、米株価指数先物が下落し、日経平均もマイナスに転じたとの可能性もないとはいえない。

 ある意味、ビットコインは今回のバブル相場の象徴だったともいえる。

 ただし、マスク氏は「臆測について明瞭にするために言うが、テスラはビットコインを全く売っていない」とツイートし、否定コメントを出していた(18日付ブルームバーグ)。

 そういえば大昔、日本の債券市場がバブル相場となっていたころ、その相場を無理矢理形成していた大手証券の債券のチーフディーラーが、「公定歩合が高すぎる」との言葉を発したあと、債券のバブル相場が弾けたことがあった。俺の行動が正しいので日銀も付いてこいといったようなコメントであった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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