4月の米CPIの前年比4.2%増に市場は驚き、米PPIの前年比6.4%増に反応しなかったのは何故か
市場が注目していた12日発表の米国の消費者物価指数は予想をも大きく上回る上昇幅となった。総合指数は前月比でプラス0.8%、前年同月比ではブラス4.2%となった。市場予想のプラス3.6%をも大きく上回った。
自動車、輸送サービス、ホテル宿泊で特に大きく上昇した。昨年4月は原油価格がマイナスになるなどしており、エネルギー価格の影響が大きいかとみていたが、コロナ禍による景気の低迷の反動も大きかったことがうかがえる。
4月は中古車が前月比10%上昇し、消費者物価指数の全体の上昇の3分の1余りを占めたとか。住居費は2年ぶりの大幅な伸び。輸送サービスは1975年以来の大幅な伸びに。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.9%の上昇となり、1982年以来の大きな伸びとなった。前年同月比では3%の上昇となり、予想の2.3%上昇を上回った。こちらは1996年以来の大幅な伸び率となった。
パンデミックの影響で昨年4月の統計が大きく落ち込み、比較にゆがみが生じたことも背景にある。「ベース効果」と呼ばれるこの現象は5月のCPI統計にも影響を及ぼす見通し(13日付ブルームバーグ)。
FRBのクラリダ副議長はこの日、米消費者物価指数の上昇には驚いたと認めつつ、インフレ率の上昇は主に一過性の要因によるものだと論じた。
本当に一過性のものであろうか。5月の数字も前年同月に落ち込んだ反動、いわゆるベース効果によって高めの数字となることが予想されている。問題はそのあとである。
さすがに4%という数字は特殊要因によるものとの見方もできようが、景気そのものの回復による物価上昇圧力は強いものがある。原油価格も上昇しており、前年比の2%程度で果たして落ち着くかどうかはわからない。
FRBの物価目標は消費者物価指数ではなく、PCEデフレーターと呼ばれるものであり、こちらがどのような数字を示すのかを確認する必要もある。
そして13日には4月の米卸売物価指数が発表され、こちらはは前月比0.6%の上昇。前年同月比では6.2%もの上昇となり、3月の4.2%から加速し、2010年の統計改定以来の大幅な伸びとなった。
しかし、13日の米債はむしろ買われて、10年債利回りは1.66%と前日の1.69%から低下した。この長期金利の低下や週間の米新規失業保険申請件数の減少を受けて米国株式市場ではダウ平均やナスダックは買い戻されていた。
何故、米消費者物価指数と米卸売物価指数による市場の反応度が違ったのが。そのひとつはの要因は市場のインフレ懸念が12日の消費者物価指数でかなり織り込まれていたことにある。このため、たとえ米卸売物価指数がさらに大きな数字であっても市場は驚かなかった。
FRBがみている物価指数はPCE(個人消費支出)デフレーターだが、いずれにしても個人消費に関わる物価指数を中央銀行は注目しており、その意味で今回に限らず以前から卸売物価指数よりも消費者物価指数への市場の注目度が高かったせいもある。