桜井前審議委員は本当にリフレ派だったのか、量的緩和の物価に対する効果に懐疑的だったと
3月末まで日本銀行の審議委員を務めた桜井真氏は12日のインタビューで、日銀は3月の金融政策決定会合で利下げの機動性を高めたと説明した(13日付ブルームバーグ)。
桜井前日銀審議委員は、いわゆるリフレ枠として送り込まれたとされていたが、どうもそのリフレ色は審議委員となってから次第に薄れていったようである。今回のインタビューでも現在の日銀の姿勢を日銀サイドから説明するような格好となった。
桜井真氏は、歴史的な経済危機が発生しない限り、日銀はマイナス金利の深掘りなど追加金融緩和を控えるとの見解を示した。今回の日銀の点検でも追加緩和ありきではなく、もしものときに追加緩和で動けることを示した格好。
利下げの際の金融仲介機能に対する副作用軽減策として導入した「貸出促進付利制度」については、利下げの必要性が差し迫っていることを示唆したものではないとも桜井氏は指摘した。
さらに、金融機関は多角化やデジタル化といった企業の取り組みを支援するべきであり、日銀が構造変化への対応や脱炭素化などを同制度で後押ししていくことを「期待したい」と語ったそうである。
日銀が現実に経済に対して本来できることは金融市場を通じた「後押し」であり、自ら積極的に物価を動かすといったものではない。それを理解した発言のように思われる。
桜井氏は日銀のETFの買入について「基本的に金融市場が荒れている時だけ買えばいい」とも指摘した。荒れている時とはボラタイルな相場が起きたとき、日銀の買入でそれを少しでも鎮めさせるというものであろう。相場急落時との表現を使っていないことは好感を持てる。日銀は株価下落時の救世主などではない。
今後の政策議論に関しては、裏付けとなるデータが不確実な「期待」を過大に評価せず、もっと実体経済をみて判断を行うべきだと主張。就任当初から量的緩和の物価に対する効果に懐疑的だったとし、現行のイールドカーブコントロール政策の下で粘り強く金融緩和を続けていくことが重要と語った(13日付ブルームバーグ)。
「期待」をコントロールして物価目標を達成させるというのはリフレ派だけでなく、日銀も主張していたはずであるが、「裏付けとなるデータが不確実な」としてそれをやんわりと否定している。これは非常に共感できる。桜井氏はリフレ派だといわれていたが、むしろこの発言は現在の日銀以上に現実派のように思われる。ただし、本当に就任当初から量的緩和の物価に対する効果に懐疑的だったのであろうか。