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ミャンマーの紙幣発行を困難にさせたドイツの「ギーゼッケ・アンド・デブリエント」という会社とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ドイツの総合印刷企業「ギーゼッケ・アンド・デブリエント」(G+D)は3日までに、ミャンマー政府への紙幣の印刷システム技術や原材料の供与を停止したと発表した。ミャンマー通貨チャットの紙幣発行が困難になる見通しで、国軍がデモや少数民族武装勢力を抑え込んでも、経済への打撃が続きそうだ(3日付共同通信)。

 あまり耳慣れない企業であった「ギーゼッケ・アンド・デブリエント」とはどういう企業なのか。

 ギーゼッケ・アンド・デブリエントは1852年に創設された欧州有数の紙幣印刷会社(念の為、公的機関ではなく民間企業)であり、ユーロ紙幣の印刷を行い欧州中央銀行に供給している欧州有数の紙幣印刷会社である。

 日本でいうところの「独立行政法人国立印刷局」である。お札、つまり日銀券の「発行」は日銀が行っているが、日銀券の「製造」は独立行政法人国立印刷局が担当している。製造された紙幣は日銀がその費用を支払って引き取る格好となっている。独立行政法人国立印刷局は、紙幣・切手・旅券・郵便貯金通帳・証券類・政府刊行物等の印刷を主に行う日本の独立行政法人である。

 ギーゼッケ・アンド・デブリエントも紙幣以外にも様々な有価証券やチケットなどの印刷も行っており、さらにユーロ紙幣以外にも自国で紙幣を印刷できない発展途上国などに対しても紙幣の印刷を請け負っている。そのひとつがミャンマーであった。

 共同通信によると、同社はミャンマーの惨事に深い懸念と悲しみを表明し「(紙幣を印刷する)国営企業と全ての取引を即時に中止する」と発表した。

 紙幣が印刷できないとなれば、じわりじわりと経済にも影響与えよう。他の国でギーゼッケ・アンド・デブリエント社の代わりに印刷を請け負うとしても、それなりの時間も掛かるはずである。紙幣を使った経済制裁といった格好となる。

 ちなみに、ギーゼッケ・アンド・デブリエントは、欧米では「世界で初めてSIMカードを発売した企業」としても知られているそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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