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債券先物は10営業日連続の下げに、11日連続の記録更新はならず

久保田博幸金融アナリスト
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 9日の長期国債先物(債券先物)は2銭安の151円48銭で引けたことで、1月27日以来、10営業日連続での下げとなった。これは10日連続安は2003年10月23日から11月7日まで10日連続安以来の記録となる(作者調べ)。10日の債券先物は1銭高となり、11日連続という記録更新はならなかった。

 この連続安がスタートする前の1月26日の引けが151円98銭であり、9日の引け値との差は50銭しかない。

 2003年10月22日の引けは136円95銭となっており、連続安が終了した11月7日の引けは136円06銭。このときの差は89銭。

 ここにきての債券先物は日中の値幅が10銭程度もしくは、それ以下の時も多く、50銭という値幅は大きく見えそうだが、以前は日中だけで50銭とか90銭と動くこともあり、決して大きく下げていたわけではない。

 実は2003年6月にはのちにVaRショックと呼ばれた国債の急落場面があった。2003年6月あたりにかけて債券相場はじりじりと上昇し10年債利回りは0.430%と過去最低利回りを記録した。この長期金利の0.430%は世界の長期金利の中でも最低水準となった。

 この相場上昇過程において、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせ、株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出した。しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものとなり、その後債券相場が急落し、これはVARショックとも呼ばれた。

 6月に145円台をつけていた債券先物は7月に140円割れとなった。その後も上値が重い状態となり、10月の連続安に繋がった。

 今回も2020年3月に155円台にあった債券先物が急落したわけではないが、上値が重くなっていた。ここにきて米債がやはり横ばいを挟んで8営業日連続での下落となっていたことも影響しての、日本の債券先物の10営業日連続安となったとみられる。

 

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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