米雇用統計が予想を下回っても米国株が買われたのはどうしてなのか
米労働省が4日に発表した11月の雇用統計は、非農業雇用者数が前月比24万5000人増と、市場予想の45万人増程度を大幅に下回った。10月の61万人増からも大幅に鈍化した。
米国内での新型コロナウイルス感染が再拡大し、雇用者の伸びは5か月連続で減速、5月以降で最小の増加幅となった。
失業率は6.7%と前月の6.9%から改善していたが、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている可能性があるとの指摘もあった。
米国株式市場では、この雇用統計の数値は材料視されている。このため、これを受けて米国株式市場は雇用の悪化から売られてもおかしくはなかった。しかし、売られるどころか、むしろ買われ、米国株式市場の代表的な指数であるダウ平均、ナスダック、S&P500種ともに過去最高値を更新した。
どうして注目された米雇用統計が予想を下回っても、株価は上昇し、過去最高値を更新したのか。
どうやらこの雇用統計が改善していないことを確認し、これによって追加の経済対策の必要性が増したとの見方が広がり、対策法案の早期成立期待から景気敏感株中心に幅広い銘柄に買いが入ったようである。
そして、本来であれば雇用を含めた景気の低迷は、米国債券市場には買い材料となるはずである。ところが、米株の上昇とその背景となった追加の経済対策への期待感から、リスクオンの動きが意識され、4日の米債は売られた。追加の経済対策となれば、国債の増発も意識されることで、米債の売り圧力となった可能性もある。4日の米10年債利回りは一時、0.98%まで上昇し1%に接近し、3月以来の水準を付けた。
米国大統領選挙でバイデン前副大統領が勝利し、渋々ながらもトランプ大統領は一般調達局にバイデン氏への政権移行開始を許可するなどしたことで、政権移行は徐々に進むとみられたことも不安要因のひとつを払拭させていた。
さらに民主党のペロシ下院議長と共和党上院のマコネル院内総務が追加経済対策を巡る協議を再開したと報じられており、追加の経済対策成立への期待感も強めていた。
そこに米雇用統計で雇用の停滞が示され、これを受けた経済対策がまとまるのではとの期待感が強まったとみられる。
期待感でこれだけ株価が動くほど、米国株式市場の地合いは良く、今後の米国債の増発も意識されて米債の地合いはあまり良くはないようにもみえる。
米国株式市場の地合いの良さは、当然ながらも株高そのものにも表れているが、株高が進むことで、売りが仕掛けづらい面もある。これはある意味、バブルの様相といえなくもない。流れには逆らってはいけないが、細かい兆候にも注意を払う必要があろう。