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米国のダウ平均が初の3万ドル台乗せに、これはバブルなのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 24日の米国株式市場は続伸となり、ダウ工業株30種平均は前日比454ドル97セント高の3万0046ドル24セントと初めて3万ドルの大台に乗せて引けた。

 米国株式市場の代表的な指数であるダウ工業株30種平均は今年2月に過去最高値を更新した。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、大きく下落し調整局面となった。ダウ平均は一時18000ドル近くまで下落した。しかし、その後は回復基調となり、ここにきてあらためて過去最高値を更新し、3万ドルの大台に乗せた。

 ダウ平均の動きを見る限り、高値を更新していたタイミングで、新型コロナウイルスの感染拡大とそれを防止するためのロックダウンなどにより経済活動にブレーキを掛けたことで、大きな調整が入った。しかし、結果としてそれは「調整」に過ぎず、米国株式市場の上昇基調は継続していたこととなる。

 この株高の根底には過剰流動性がある。新型コロナウイルスの感染拡大で、超金融緩和はさらに深掘りされる格好となり、財政政策も打ち出された。実体経済も4~6月期に大きく落ち込むが、そこからは回復基調となりつつある。

 過去の歴史をみてもパンデミックはいずれ落ち着く。新型コロナウイルスのワクチンへの期待もあらためて強まってきたことで、先行きの不透明感がやや払拭されてきた。大規模なロックダウンによる景気への影響は非常に大きいことも示され、経済を回しながら感染拡大を防止する対応になってきている。これにより経済の正常化の動きが出てきた。

 そこに加わったのが、米国の政治の正常化への期待となる。バイデン次期米大統領は、財務長官にFRB前議長のジャネット・イエレン氏を指名する計画だと報じられた。米財務省とFRBの関係がこじれつつあるところ、バイデン政権下ではより関連性が強まることが期待され、これは金融経済にとっては好材料となる。

 そして、ホワイトハウスに居座るつもりなのかと思われたトランプ米大統領が23日、バイデン前副大統領への政権移行業務を容認する姿勢を示したことも好材料となった。これによって新型コロナ関連や外交などの機密情報を得られるようになり、政策策定の準備がしやすくなる。政権移行がスムーズに進まないというリスクが後退した。

 このような好材料が重なってのダウ平均の3万ドル台乗せとなった。これがバブルであろうことも確かなのかもしれない。バブルの最中にはバブルと認識するのは難しいが、実体経済と株価が乖離し、いずれそれが調整されることも確かかもしれない。しかし、そのタイミングを見極めることも難しい。波には乗る必要がある。ただし、その波に何かしらの変化が生じたら飛び降りる準備もしておく必要はある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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