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中国が相次いで外貨建ての国債を起債、保有にも注意が必要

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 ロイターが16日、入手した投資家向けメモによると、中国が史上最大規模のユーロ建て国債発行に向け、引受先金融機関を選定したことが分かったと報じた。

 最低でも50億~80億ユーロ(59億~94億ドル)の規模を3~5回(トランシェ)に分割して発行する可能性が高いとか。中国財政省は昨年11月、総額40億ユーロのユーロ建て国債を15年ぶりに発行しているが、これを上回る(17日付けロイター)。

 中国は15日に期間3年、5年、10年、30年のドル建て国債を発行し、総額60億ドルを調達していた。これに続いてユーロ建てでも国債を発行し、資金を調達する。

 ロイターによると、ドル建て国債の発行の内訳は3年債が12.5億ドル、5年債が22.5億ドル、10年債が20億ドル、30年債が5億ドル。3年債のプライシングは米国債に25ベーシスポイント(bp)上乗せした水準で、5年債は30bp、10年債は50bp、30年債は80bp、それぞれ上乗せした水準に設定された。

 米中は経済を中心に対立姿勢を示しているものの、こちらは純粋に投資価値が意識されて米国の投資家などからのニーズを強めたようである。

 中国も新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、経済活動を停止せざるを得なかった。そのため、政府の対策が求められ、財政拡大を受けての今回のような大型の外貨建ての国債発行に踏み切ったとみられる。

 また、中国の国債の流動性を国際的に高めたいとの意図もあるのかもしれない。元建てでは保有しにくくても、ドル建てやユーロ建てとなれば、保有しやすい投資家も多いとみられる。ただし、中国では社債のデフォルト(債務不履行)が相次ぎ、自国の国債需要にも影響を及ぼしているとの報道もあり、中国国債の保有には注意も必要か。

 ちなみに、日本国債については現在、外貨建てでの発行はされていない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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