政治と経済の『正常化』への期待
注目された米国大統領選挙では、民主党のバイデン前副大統領が勝利した。バイデン氏が勝利を宣言した際に「分断ではなく結束を目指す大統領になる」と述べて国民の融和を訴えた。これは米国内に限らず、海外諸国に対しても分断から結束を目指すと期待される。トランプ大統領は選挙で不正が行われたとして、法廷闘争を続ける姿勢を示しているが、いずれにしても来年1月20日にはバイデン大統領が誕生する。
トランプ大統領は過激な言動を繰り返し、米国ファーストとして、他の国との和を乱すような存在となった。そして、中国との覇権争いにおいて、関税の引き上げ合戦を行ったことで、市場の不安感を強めさせた。米中の覇権争いは避けがたいものではあったとはいえ、トランプ大統領のやり方は強引過ぎた。
米国でのトランプ再選が封じられたことで、ある意味で政治の「正常化」への期待が強まってきた。隣国のカナダや欧州との関係改善も期待される。
日本では首相が個人的な関係を築いていた安倍前首相から菅首相に代わっていたことで、バイデン氏とあらたな関係を築くにも障害はないのではなかろうか。
そして、新型コロナウイルスのワクチン開発の期待が出てきた。米国の製薬大手のファイザーが独ビオンテックと共同開発するコロナワクチンの臨床試験で、9割以上の被験者に感染防止効果がみられたとの初期データを発表した。安全性の検証が終わり次第、11月第3週にも米食品医薬品局(FDA)にワクチンの緊急使用許可を申請するという。
ワクチン供給の見通しについてファイザーは年内に5000万回分、来年には最大13億回分を生産できるとしていて、日本政府も来年6月末までに、6000万人分の供給を受けることで基本合意している(10日付NHK二ユース)。
これを受けて、9日の米国株式市場では、経済の「正常化」への期待でダウ平均が上昇した。リモートワークや巣ごもりが意識されて買われていた銘柄は売りに押され、ナスダックは下落した。
ワクチンが本当に効くのか。その効果は持続するのか。副作用は本当にないのか。疑問は残るが、このワクチンによって新型コロナウイルスの感染拡大が止まる可能性も出てきたことは確かである。過去のパンデミックも一定の時間が過ぎれば収まっている。それを見越して金融市場は動き始めている。
政治と経済の「正常化」への期待が強まりつつある。先行きが見通せず、不安感しかないような状況から、霧が徐々に晴れつつある。過剰な期待も禁物ながらも、政治と経済の正常化が訪れることを望みたい。