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米国の大統領選挙はデジタル通貨の行方にも影響か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 FRBのパウエル議長は19日、中銀デジタル通貨(CBDC)を「最先端で研究していく」と表明。中国を意識し、消極的だった米当局の姿勢に変化がある。民主党のバイデン陣営にCBDCの推進論がある一方、共和党は民間主体の電子決済を後押しする。デジタルドルの行方は選挙結果が大きく左右しそうだと20日の日経新聞が報じた。

 米国大統領選挙は野党・民主党のバイデン前副大統領が有利とされているが、前回のこともあり、蓋を開けるまでわからない。蓋を開けて結果が出ても、そこからもめる可能性すらある。

 それでもいずれ決着は付く。この米大統領選の行方は、どうやらデジタル通貨の行方も左右しかねないようである。

 ここにきて日銀もデジタル通貨に対して前向きの姿勢を示し始めたが、上記のパウエルFRB議長の姿勢の変化も、中国を意識したものと思われる。ただし、日銀もFRBも当面はCBDCの発行は考えていないとしている。しかし、中国のデジタル通貨が広く受け入れられるような状況となれば、黙ってみているわけにはいかなくなる可能性もある。

 米国の共和党はCBDCではなく民間主体の電子決済を後押ししているとされる。これに対して、民主党は大手金融機関のデジタル通貨の発行を禁じる法案を検討するなど、姿勢は大きく異なっている。

 そもそも中央銀行に個人が決済口座を持つということが可能なのか。日本では日銀が直接発行するのではなく、民間金融機関と日銀の当座預金口座での取引を通じ、民間金融機関が発行し、管理するようなかたちが想定されているように思われる。

 米国ではデジタル通貨の行方を左右しかねない人物がいる。現在、FRBでデジタル通貨を統括しているブレイナード理事である。すでに報じられているように、民主党のバイデン氏が大統領となった際の、財務長官の最有力候補がブレイナード氏である。

 ブレイナード理事は8月の講演で「新型コロナウイルスで米国民全員が利用できる決済インフラが必要なことがはっきりした」と主張した。ブレイナード氏が財務長官となれば、中国への対抗という意味でも、デジタル通貨の促進を一歩進めてくる可能性がある。

 これに対してトランプ大統領が再任した場合には、これまでのトランプ氏の動向をみても、それほどデジタル通貨には熱心とは思えない。ムニューシン財務長官も「少なくとも今後5年間はCBDCの発行は不要との考えで(パウエル議長と)一致している」との発言もあった。しかし、こちらも中国の動向次第では、デジタル通貨を進める姿勢を強める可能性もないとはいえない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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