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海外投資家による8月の米国債保有額は減少

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 米財務省が10月16日に発表した8月の国際資本収支統計における米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、日本は引き続きトップを維持していた。

MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES

 米10年債利回りは7月末にかけて低下基調となっていたが、8月4日あたりを起点として今度は上昇基調に転じていた。7月31日に格付け会社のフィッチは米国の債務格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げた。4日に発表された7月のISM製造業景況指数は1年4か月ぶりの高水準に。4日には米5年債利回りが過去最低を更新していたが、5日に米財務省は過去最高となる1120億ドル相当を四半期定例入札で発行すると発表した。このあたりから地合が変わったものとみられる。

 11日にはロシア政府が世界初の新型コロナウイルスのワクチンを承認したと報じられ、米10年債利回りは0.6%台に上昇。13日には0.7%台に上昇した。このあと再び0.6%台に低下したが、その後は0.6%台後半での推移が続き、10月に入ってからは0.7%台主体の動きとなっていた。

 8月の海外投資家の米国債保有額は、7月の7兆970億ドルから7兆830億ドルに減り、4か月ぶりの減少となった。米国債の過去最大規模の増発による需給への影響や、景気の回復期待、新型コロナウイルスのワクチン開発への期待から、利益確定売りに押された格好か。

 あらためて国別の米国債保有残高を確認すると、8月の日本の米国債保有額は1兆2784億ドルとなり、前月比で146億ドルの減少となったが、引き続きトップは維持した。これに対して、2位の中国は1兆680億ドルとなり、前月比で54億ドルの減少となった。また、香港が大きく売り越していた。上位10か国の米国債保有額は下記の通り。

国、米国債保有額、前月比(単位、10億ドル)

日本(Japan) 1278.4-14.6

中国(China, Mainland) 1068.0-5.4

英国(United Kingdom) 419.9-4.8

アイルランド(Ireland) 335.3 +4.5

ルクセンブルク(Luxembourg) 268.8 +4.1

ブラジル(Brazil) 265.0-0.7

スイス(Switzerland) 253.1 +2.4

香港(Hong Kong) 250.9-16.2

ケイマン諸島(Cayman Islands) 228.9 +6.6

ベルギー(Belgium) 215.0 +3.1

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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