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欧州で新型コロナウイルスの感染が再拡大、イングランド銀行はマイナス金利政策を導入するのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 欧州で新型コロナウイルスの感染が再拡大している。フランスとスペインでは9月に入り1日に約1万人と今春を上回る感染者数が確認された。英国でも新型コロナの感染者がここ数週間で急増している。

 欧州各国は3~5月ごろに、新型コロナウイルス感染拡大を封じ込めるため、厳しいロックダウンを実施した。その後、感染者数の減少を受けて、外出制限などを緩和。しかし、検査件数の増加に加えて、バカンスで人の移動が増えたことなどから、若者主体に感染が再拡大してきたようである。

 スペインでは21日から首都マドリードの一部で外出制限を再開した。3月に中央政府が非常事態を宣言して導入した厳しい外出制限とは異なり、通勤や通学、通院などのための移動を除き、各地区の出入りを制限する(19日付日経新聞)。

 英国のハンコック保健相は20日、新型コロナウイルス感染症を巡り、英国は転換点を迎えているとし、感染拡大を防ぐための政府の規制に国民が従わなければ、全国的なロックダウンを再導入する可能性があると警告した(21日付ロイター)。

 英国ではすでに局地的ロックダウンが導入されているが、これを全国規模に拡げる可能性も出てきたようである。そうなると再び英国経済に深刻な影響を与える可能性がある。

 これに対して、英国の中央銀行であるイングランド銀行のベイリー総裁は、新型コロナウイルスの新規感染症例が増加し、英国経済の下振れリスクを強めているものの、マイナス金利の導入が近い状況ではないと述べた(22日付ブルームバーグ)。

 ベイリー総裁など関係者の発言を受けて、イングランド銀行はマイナス金利政策を導入するのではないかとの観測が強まっていたが、あくまで実際に導入が可能なのかどうかを検証している段階にあるようである。

 コロナ禍にあっての景気の減速は、人為的に起こされたものとなる。その際には通常の景気対策というよりも、人や物の移動の制限により、大きな影響を与える業種への影響を少しでも和らげる政策が必要とされる。

 すでに政策金利がゼロ近辺にある際には、それをマイナスにすることは、むしろ金融業界などに負の影響を与え、それが違う業種にもマイナスの影響を与えかねない。副作用が出るものをあえて、このタイミングで行う必要性はないと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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