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欧米に続き、4~6月期のGDPは日本も過去最大級の落ち込みとなるが、問題はこの先か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:西村尚己/アフロ)

 内閣府が17日に発表した2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で1~3月期からマイナス7.8%、年率換算でマイナス27.8%となった。リーマンショック後の2009年1月~3月の年率マイナス17.8%を超えて戦後最大の落ち込みとなった。

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、4月7日に緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日。この間、人や物の移動が制限され、この結果、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞り、その結果、GDPは統計を遡れる1955年以降で最大の落ち込みとなった。

 緊急事態宣言が解除されたあと、あらためて新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大したこともあり、経済活動はある程度制限せざるをえなくなり、正常化にはまだまだ距離がある。

 GDPは消費税率を10%に上げた2019年10~12月期から減少し、東日本大震災を挟む2010年10~12月期から2011年4~6月期以来の3期連続のマイナス成長となった。

 GDPの年率換算の金額は485.2兆円となり、2012年10~12月期以来の500兆円割れともなった。これによって債務残高の対GDP比は計算上はさらに大きくなる。

 米国の4~6月期GDPも年率換算で前期比32.9%のマイナスとやはり過去最悪の下落率となっていた。

 ユーロ圏19か国の2020年4~6月期のGDP速報値も前期比で12.1%減、年率換算では40.3%のマイナスとなっており、こちらも過去最大の落ち込みとなっていた。

 英国の4~6月期GDPは年率換算で前期比59.8%のマイナスとなっていた。

 GDPはいわば過去の数字であり、緊急事態宣言による影響もあって20%以上のマイナスとなり、統計を遡れる1955年以降で最大の落ち込みとなることはある程度、予想されていた。このためサプライズとはならないものの、数字そのものはかなり大きなものとなったことで、ある程度の衝撃とならざるをえない。しかし、上記のように欧米は数字上ではそれ以上の悪化となっていた。

 ただし、問題はこの後である。7~9月期のGDPについてはプラスに転じると予想されている。それはどの程度の回復となるのか。しかし、まだ8月半ばであり、今後の行方にも不透明感はあり、それどころか再びマイナスに落ち込むリスクはないのか。市場はこのあたりを探りながら動いていくと予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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