世界的なドイツのフィンテック企業、ワイヤーカードの破綻はどうして起きたのか

(写真:ロイター/アフロ)

 欧州有数のフィンテック企業とされるドイツのワイヤーカードが25日、破産手続きに入ったと報じられた。

 ワイヤーカードは、店舗やオンライン、携帯電話で、クレジットカードやアップルのアップルペイ、米電子決算大手のペイパルなどでの支払いを導入できるオンライン決済サービスを主力事業としている。

 同社ではバランスシートの4分の1に相当する19億ユーロ(約2280億円)が所在不明になっていたが、同社は22日、現金は「存在していなかった」可能性があると認めた。ワイヤーカードは2019年、ソフトバンクグループから9億ユーロ(約1000億円)の出資を受けている(24日付 AFPBB News)。

 同社を巡っては、2019年にフィナンシャル・タイムズが内部告発者からの資料提供を基に収益の不正な水増し疑惑を指摘した。売上高を水増しした結果、貸借対照表上の帳尻を合わせるために、存在しない「19億ユーロ」の現金を計上した可能性も出てきている。疑惑は昨年1月に英フィナンシャル・タイムズが最初に報じたが、およそ1年半に渡り、独当局は次世代産業の期待の星としてワイヤーカードを保護するような姿勢を見せていた(24日付日経新聞)。

 実際に、どのような経営がなされていたのかは今後の捜査次第とはなろうが、欧州を中心とした金融機関からの融資もあり、これが不良債権化する恐れがある。また、監査に落ち度があったとなれば、批判の矛先が監査法人に向かう可能性も出てくる。2001年の米エンロン事件のようなものに発展する懸念がある。

 それとともにワイヤーカードの破綻によって、これを利用している店舗が支払っている保証金の問題が浮上している。ワイヤーカードは法人顧客が決済サービスを利用するにあたって事前に保証金をとっており、破産で返金に問題が生じる可能性が出てきている。

 今回のワイヤーカードの破綻については、フィンテックそのものへの懸念というより、ワイヤーカードの経営体質に問題があるように思われる。それを見抜けなかった、もしくは見て見ぬふりをしていたのか、監査法人への問題も当然ある。また、こういった新興企業を育成しようとするあまり、ドイツの当局が保護するような姿勢を見せていたことにも問題はあろう。

 いずれにしても、今回のワイヤーカードの破綻により、欧州の金融機関、さらにこれを利用していた企業などかなり広範囲に影響が及ぶ可能性があり、今後の動向に注意する必要がある。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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