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新型コロナウイルスの感染が再拡大するなかナスダックは過去最高値を更新中

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染者が22日、世界で900万人を超えた。米国では21日にカリフォルニア州やフロリダ州で1日当たりの感染者数が過去最高となり、前週末にかけて複数の州で感染者が急増した。

 ドイツでは西部にある工場で大規模な集団感染が発生したことなどで流行の広がりを示す数値が大きく上昇した。韓国疾病予防管理局(KCDC)は22日、5月初めの連休明けから首都ソウルを起点にした新型コロナウイルスの感染第2波の渦中にあるとの認識を初めて示した。ブラジル、ペルー、チリなど南米を中心に加速的に感染が拡大している。

 このような状況下にあって、米国の代表的な株価指数であるナスダック総合指数が連日の過去最高値更新となった。

 株式市場が実体経済を反映しておらず、中央銀行による大胆な金融緩和政策で金余り現象が加速し、政府の財政政策によりその資金の一部も株式投資に向かっているために、異常な株高現象が起きている。これはいずれ大きく修正されるであろうとの見方も出ている。

 米国株式市場ではダウ平均やS&P500は高値は更新しておらず、ナスダックがここにきて高値を更新してきた。これは、新型コロナウイルスの感染拡大とそれによる活動自粛が、ナスダックに多く上場しているハイテク企業にとっては収益のプラスに作用するという側面があったことも確かである。

 たとえば、22日にはアナリストが目標株価を引き上げたアップルが上場来高値を更新し、マイクロソフトやネットフリックスも上場来高値を更新した。

 新型コロナウイルスは我々の生活様式を変えるのではないかとの見方がある。私はこの見方に半信半疑である。しかし、会社に行かなければ仕事にあらず、と考えていた人たちの認識を変えたことは確かなのではなかろうか。テレワークもハイテク機器があってのものとなる。ネットワーク回線とパソコンなどが最低限度必要となる。しかし、それらがあれば場所を問わず仕事や会議ができるということをあらためて示すことになった。

 これによりあらためてハイテク機器に絡む企業の株には成長期待の買いが入りやすくなった。今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けた景気の悪化は、あくまで人為的に引き起こされたものであり、制限を緩めれば経済活動は回復する。ただし、二次感染のリスクがあり、現在はこの両者とどのように折り合いをつけるべきか試行錯誤している段階にある。経済活動が復活すれば、以前の状態に完全に戻ることはないとしても、戻る余地が大きいことも確かである。ここにきての欧米の経済指標もそれを示しているようなものが出てきている。

 そうはいっても、株式指数が過去最高値をつけるほど経済が活性化していたかといえば、確かに疑問は残る。いわゆる過剰流動性が相場を押し上げているということも念頭においてみる必要はある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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