米国やドイツでの国債増発、債券市場は警戒も。日本も第二次補正を準備か
米財務省は四半期定例入札(クォータリーリファンディング)で発行する国債の規模を過去最大となる960億ドルに引き上げると発表した。そして20年債の発行を再開することも明らかにした。20年債の定期発行はレーガン政権下の1986年以来34年ぶりとなる。ただし、20年債の発行再開そのものは資金調達手段の多様化を図るためとして、今年の2月にすでに発行計画は公表されていた。
米財務省のブライアン・スミス副次官補は声明で、新型コロナウイルス対策に関連する資金調達は当初、政府短期証券の発行によって賄っていたが、今後数四半期は満期までの期間が長い債券の発行による資金調達にシフトしていくと表明した。
そして、6日にドイツでは2015年以来となるシンジケート団を通じて初の15年債の発行を行った。日本でも国債発行の際にシンジケート団が引き受ける方式が以前に行われていたが、現在はシンジケート団そのものが廃止されている。
今回、ドイツ政府がシンジケート団を通じて15年債発行にて調達した金額は75億ユーロとなったが、引き合いは355億ユーロ超と、国内でのシ団方式売却としては過去最高に達したそうである。
米国での20年債を含めた国債の増発、さらにはドイツでの国債発行の目的は、両者ともに新型コロナウイルス対策に必要な資金を確保するためである。
すでにマイナス利回りとなっているドイツ国債ではあるが、これまで比較的国債発行額は抑えられてきた。ドイツ国債はユーロ圏内では最も安全な資産のひとつでもあり、潜在的なニーズは強い。米国債は安全資産でありながらプラスの利回りとなっていることもあって、こちらもニーズは強いとみられる。
このため、今回の国債の増発に関しては、それほどの需給悪化懸念材料とはならないとみられたが、6日の米国と欧州の国債はそれぞれ売られていた(7日はそれぞれ買い戻されたが)。
目先の需給悪化とはならなくても、今後の国債発行については増発圧力がさらに強まることも予想される。日本でも今年度第二次補正予算を政府・与党が検討とも伝わっている。国債が増発されるとはいえFRBやECB、日銀が量的緩和策の拡大により、大量に国債を購入するであろうことも想定され、これも需給悪化を防ぐとの認識もあろう。
しかし、ドイツ連邦憲法裁判所がECBの国債を買い入れる量的緩和政策は一部違憲と判断するなど、主要国で禁止されている財政ファイナンスへの懸念も出てきている。これは日本も同様である。
新型コロナウイルスの感染拡大の防止には、経済活動が犠牲とならざるを得ない。このため戦後なかったような景気や雇用の大幅な落ち込みとなっている。これには政府が支援せざるを得ないことで、その財政政策のための資金は借金に頼らざるを得ない。また、中央銀行も景気の下支えのために、積極的な金融緩和策を実施している。政策金利がゼロ、もしくはマイナスとなっているところは、その副作用が意識され、金利の深掘りはむしろリスクになる。このため、どうしても量的緩和策に頼ることになり、その主役は国債の買い入れとなる。
財政政策のための国債増発と量的緩和拡大による中央銀行による大量の国債買い入れが組み合わされると、これは財政ファイナンス、マネタイゼーションとも写ってしまう。このリスクを軽減させるためには節度ある債務管理政策も必要となろう。