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異例の補正予算の組み替え後の国債発行計画

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 政府は20日の午後、全国民への現金10万円の一律給付を盛り込むために組み替えた2020年度補正予算案を閣議決定した。補正の一般会計総額は7日に決めた同案から8兆8857億円増え、25兆6914億円となる。

 この組み替えにより増えた歳出の財源は全て赤字国債の追加発行で賄うことになる。2020年度補正の赤字国債発行額は23兆3624億円となり、補正予算としては過去最大の発行額となる。

 組み替え後の国債発行予定額を確認してみたい。2020年度の度補正後(変更後) の新規国債の発行額は建設国債2兆3290億円(組み替え前と同額)、特例国債(赤字国債)23兆3624億円(組み替え前比8兆8857億円増)。財投債は9兆4000億円(組み替え前と同額)。これにより国債発行総額は35兆914億円となる(組み替え前比8兆8857億円増)。

 消化方式別発行額としては、当初予算と比べ、カレンダーベースの市中発行額が24兆円、第二非価格競争入札分1兆656億円、そして「年度間調整分」として10兆258億円、合計で35兆914億円増額される。

 組み替え前と比較して、カレンダーベースの市中発行額は5兆8000億円、第二非価格競争入札分630億円、そして年度間調整分は3兆227億円増額修正された格好に。

 カレンダーベースの市中発行額の増加分の5兆8000億円の配分は、1年物短期国債と2年債と5年債が7月分から組み替え前から毎月1000億円上乗せされることで、都合2兆7千億円増。これに6か月物短期国債が組み替え前の6.9兆円から10兆円に修正され、この3兆1千億円を加えて、修正後のカレンダーベースの増額は5兆8000億円となる。

 修正後のカレンダーベースの発行額は、

2年国債、2.0兆円が3か月、2.4兆円が9か月

5年国債、1.9兆円が3か月、2.1兆円が9か月

10年国債、2.1兆円が3か月、2.3兆円が9か月

20年国債、0.9兆円が3か月、1.0兆円が9か月

30年国債、0.7兆円が3か月、0.8兆円が9か月

40年国債、0.5兆円が6回

1年短国、1.8兆円が3回、2.4兆円が9回

6か月物短国は10兆円、流動性供給入札は11.4兆円

 今年度の前倒債の発行限度額は43兆円となっている。このうち補正予算分の財源として10兆円程度を取り崩す。なるべくバッファーを確保する必要があり、2年と5年などを含め、さらなる増発も組み込まれた。日銀の国債買入もあり、今回の組み替えによる増額も国債需給にはそれほどの影響はないとみられる。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による影響から今年度の税収は大幅に減少するとみられ、今後もさらなる補正予算が組まれることも予想される。バッファー分は今後さらに取り崩されることが予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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