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緊急経済対策の財源は国債の増発、その内訳とは、それによる債券市場への影響は

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 政府は7日夕の臨時閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を決定した。事業規模は過去最大の108兆円となる。対策を盛り込んだ補正予算案は4月中の成立を目指す。2020年度本予算で対応する分を含めた財政支出の総額は39.5兆円でこちらも過去最大となる。このうち今回の補正予算に対応する16.8兆円を国債発行でまかなう(8日付日経新聞)。

 補正予算に伴う新規国債の増発額は、建設国債が2兆3290億円、特例国債(赤字国債)が14兆4767億円となる。合計で16兆8057億円。

 これに加えて財投債が9兆4000億円増発される。財務省のサイトには財政投融資計画の追加を行うこととするとして、財政投融資計画を10兆1877億円追加とある。

 これにより今年度の国債発行額は当初に比べて26兆2057億円増額される。

 当初は新規国債の16.8兆円分がカレンダーベースに反映され、そのまま増額されると思っていたが、そこに財投債が加わったことでやや状況が変わった。26兆2057億円のうち、カレンダーベースの増額幅は18兆2000億円、第二非価格競争入札分1兆26億円、そして「年度間調整分」として7兆31億円が加わった。年度間調整分とは前倒し発行分の取り崩しとなる。43兆円の前倒し発行分は今後のバッファーとして残すかと思われたが、一部を取り崩してきた格好となる。

 カレンダーベースの増発については、40年債は変わらず、30年債は7月から毎月1000億円増額、20年債も同様、10年債は7月から毎月2000億円の増額となり、5年債は毎月1000億円、2年債は毎月3000億円の増額となる。1年物の国庫短期証券(TDB)は毎月5000億円、そして6か月物のTDBは都合で6.9兆円発行される。10年物物価連動債は合計で4000億円減額となる。

 カレンダーベースの増発分は事前予想より若干多めとなったが、これによる債券市場への影響はそれほど大きくはないと予想している。その分、日銀が買い入れるから問題ないとの見方もあるが、それはつまり財政ファイナンスとの認識ともなりかねないため、その見方は取りたくはない。現実にはそうであったとしても、あくまで潜在的な投資家ニーズがあるため、今回の増発については問題はないとみている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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