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米国株式市場ではダウ平均が過去最大の下げ幅に。大恐慌を招いたとされる1929年の株価暴落時との比較

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 27日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均が前日比1190ドル95セント安の25766ドル64セントとなり、一日の下げ幅としては2018年2月5日の1175ドル安を超えて過去最大となった。

 今回は何かしら突発的なことがあって下げたわけではない。新型コロナウイルスの感染の世界的な拡大によっての世界的な株安連鎖が起きていたが、米国内でも感染進行している兆候が出ていたことで、下げ幅を拡げた格好になった。

 米疾病対策センター(CDC)は26日、カリフォルニア州で海外渡航歴がなく、感染者との接触も未確認の人への感染事例があったと発表した。また、カリフォルニア州知事が、アジアに渡航後、帰国した8400人に新型ウイルスの兆候が見られないか経過観察しているとを明らかした。

 日本では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍首相が来月2日から全国すべての小学校・中学校、それに高校などについて、春休みに入るまで臨時休校とするよう要請する考えを示した。これは極めて異例であり、政府による積極的な新型コロナウイルスの感染拡大封じ込め策の発動ともみえる反面、それだけ事態の深刻さがうかがえる。

 今回の株価の急落から、世界恐慌の再来ではないかとの観測まで出ていたようである。確かに状況は似ている。一般には1929年の世界恐慌のきっかけとされているのは、10月に起きたニューヨーク株式市場の暴落であった。その暴落前のニューヨーク株式市場は、経済学者アーヴィング・フィッシャーが「株価は恒久的に高い高原のようなものに到達した」と発言するほど非常に高い水準を維持していたのである。

 今回もニューヨーク株式市場は2月に入っても主要3指数が過去最高値を更新するなど異常に高い水準が続いていた。欧州でもストックス欧州600種なども過去最高値を更新していた。

 この根底にあったのは中央銀行による金融緩和によるものとの見方が一般的である。いわゆる過剰流動性相場が続いていたといえる。経済そのものも緩やかな回復傾向にあったことも株価を支えていた。しかし、経済実態からみて株価はやはり高すぎたとも言えるのではなかろうか。

 このため、今回のニューヨーク株式市場をはじめとする世界的な株安連鎖はこの割高感の修正とみるべきではないかと思われる。1929年の株高とその後もクラッシュもある意味、高すぎた株価の修正との見方もできる。1929年の大恐慌はこの株安が発端とされたが、今回も株安が恐慌を招くのかといえば、1929年当時とは経済を取り巻く環境等にも違いがあり、一概にそれを連想するべきではない。それでも新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に与える影響は少なからず出ることが予想されることも事実である。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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