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新型コロナウイルスによるサプライチェーンへの影響をどう読むべきか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 アップルは17日、1~3月期に630億~670億ドル(約6兆9千億~7兆4千億円)としていた売上高予想について「達成できない見込みだ」と発表した。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、主力のスマートフォン「iPhone」の生産に響き、供給面で課題となっているため(18日付日経新聞電子版)。

 中国での新型コロナウイルス感染の拡大を受けて、いわゆるサプライチェーンへの影響が出てきたものといえる。サプライチェーンとは原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全プロセスの繋がりのことを示す。

 iPhoneはアップルが自社工場で受注生産をしているわけではない。iPhoneの設計やデザインはアップルが行っているが、その部品は日本を含めて世界各国の企業が生産し、それを中国の工場などで製品として組み立てている。

 アップルによれば、iPhoneの生産委託工場はすべて湖北省以外の場所にあり、操業は再開しているそうだが、それでも生産開始時期が遅れたり、部品の調達がままならない事態も想定される。

 これはアップルに限ったものではなく、日本のメーカー、たとえば自動車や電気などにも影響を与えることが予想される。どの企業の、どの製品が中国で作られているか、もしくは必要とされる部品が中国で生産されているのか、細かいところまではなかなか知り得ないこともあり、これによる影響は現状は把握しきれないのではなかろうか。

 17日に発表された日本の10~12月期実質GDP速報値は前期比1.6%減、年率換算では6.3%減となり、5四半期ぶりにマイナス成長に転じた。このマイナス成長は予想されていたものであったが、それは一時的となり、1~3月期は再びプラスに転じるとの見通しとなっていた。

 しかし、今回の新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大による影響を受けて、2期連続でマイナス成長となる可能性が強まってきている。むろん、これが一時的なものであり、4~6月期はその反動で回復するとの見方もできるかもしれないが、いまのところ新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大による影響は見通せず、予測が難しい。

 17日の米国市場はプレジデンツデーの祝日で休場であったが、開いていた欧州市場では中国の金融緩和策などの景気対策を実施するとの期待などから、ドイツのクセトラDAX指数は過去最高値を更新し、ストックス欧州600種も引け値で最高値を更新した。

 しかし、18日の東京株式市場ではこのアップルの発表もあり、日経平均は下落した。

 ここにきて金融市場はリスクオフとリスクオンの動きが交互にきている感がある。それでも欧米の株価は過去最高値水準近辺にあることも確かであり、今回のようにちょっとした材料で大きく動きやすくなっている。また、実体経済と株価が乖離している点にも注意が必要か。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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