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金融市場は気まぐれで意外に短気、リスク回避の巻き戻しの動きを強め、米株価指数は最高値更新

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 5日の米国株式市場では、ダウ平均が483ドル高となり前日の407ドル高に続いて大きく値を戻した。ナスダックとS&P500とともに過去最高値を更新した。米債は売られ、1月31日に1.50%まで低下していた米10年債利回りは1.65%に上昇し、長短金利の逆転、いわゆる逆イールドも解消した。個人的に注目していた原油先物価格も5日は6日ぶりの反発となり、リスク回避のアンワインドの動きが強まった。

 新型コロナウイルスの拡大が収束したわけではない。むしろ中国ではさらに拡大を続け、日本国内の感染者数も増加している。

 ただし、その感染者などの数字に以前ほどは敏感ではなくなりつつあることもたしかである。これは致死率がそれほど高くはないことが次第に明らかになってきていることもあるのではなかろうか。

 また、中国の研究者が新型肺炎に効果的な治療薬を発見したとの報道や英国で新型コロナウイルスのワクチン開発に大きな進展があったとの報道なども影響した。これについてWHOは有効性が証明された治療法はないとするなど慎重な姿勢を見せてはいる。

 しかし、中国などを中心に各国の研究機関も積極的に治療方法を模索していることもたしかであり、それほど時間を置かずに効果的な治療薬などの開発に成功するのではとの期待も強まっているように思われる。

 ただし、それ以上に今回のリスク回避の巻き戻しの動きは、気まぐれで意外に短気な側面があることも影響しているのではなかろうか。同じ材料に飛びついても飽きる、という言い方は適切ではないかもしれないが、それで同じような動きを続けることには限度もある。

 リスク回避から株を売って、円を買って、国債も買うといったような投機的な動きが強まっても、仕掛けた向きはいつ、どのタイミングでそのポジションをアンワインド(反対売買)したら良いかを狙っている。このため、リスクが完全に消滅するのを待つことなどはなく、市場のリスクが若干でも後退したとみるや、一気にポジションを解消する。今回がまさにそのような動きとなったものとみられる。

 もちろん、まだ新型肺炎拡大の動きは注視する必要はあるし、それによる世界経済への影響も意識しなければならない。しかし、市場ではそのリスクを意識した仕掛けは次第にしづらくなり、あらたな材料を求めるような動きとなってくることも予想される。トランプ氏有利かとみられる米大統領選挙も民主党から意外な伏兵が出てくる気配もあり、こちらの注目度が高まることも予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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