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今度のブラックスワンもそっと飛び立っていく可能性も、市場ではリスク回避の反動となり次第に冷静に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 今年に入り、すでに2匹のブラックスワンが登場したが、市場の動きをみると比較的冷静のように思える。

 最初のブラックスワンは、中東でのイランと米国の対立による危機であった。米国はイラクの首都バグダッドで行った空爆で、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。これに対しイランがイラクの駐留米軍基地に十数発以上の弾道ミサイルを発射した。

 しかし、米国側に人的被害がなかったこともあり、イランと米国の軍事衝突という事態は避けられた。これによりイランと米国は、対立する姿勢は見せながらも、政治的な配慮も行っていることが示され、中東での不安材料は一時的なものとなり、ブラックスワンは飛び去っていった。

 その後にあらわれた2匹目のブラックスワンが中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大である。

 新型コロナウイルスの感染拡大について中国の習近平国家主席は、共産党指導部全体の意見として、政府の初期の対応に問題があったことを初めて認めた。さらに予防対策を徹底し、国を挙げて感染拡大を抑え込む考えを示した。

 新型コロナウイルスの感染拡大による影響に対しては、いまのところ悲観的な見方と楽観的な見方が交錯しているように思われる。株式市場の動きをみても、連日大きく下げるようなことはない。昔の相場を知るものとして、市場がパニック的な動きとなっているようには思えない。むしろ冷静な動きをしているように思える。

 これは現在の相場が、アルゴリズム取引の増加などにより、以前と変わってきたためとの見方もある。しかし、アルゴリズム取引も結局は人間により作られている以上、相場つきが大きく変化したようには思えない。

 新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済への影響については、現状では見通すことはできない。しかし、中国政府の封鎖に向けた本気度からみても、いずれ収束に向かう事も期待される。気温などにも影響されるのであれば、これから春に向かい、気温が上昇することで、感染拡大が抑えられる可能性もある。

 それでも一時的にせよ、サプライチェーンなどに影響が出ることは避けられない。日本国内では盛り上がってきていたインバウンド需要が大きく後退することも予想される。一時的にせよ景気減速は避けられない。それでも今度のブラックスワンもそっと飛び立っていく可能性も高いのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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