日本の10年債利回りはゼロ%近傍のレンジ相場に
日本の10年債利回りは14日にプラス0.010%まで上昇しも再びプラス圏に入ってきた。そもそも日本の10年債利回りが昨年9月にマイナス0.3%まで低下していたことが、やや異常事態となっていたと思われる。
マイナス0.3%まで低下したのには理由があり、これは米国やドイツ、英国といった欧米の10年債利回りの低下に連動していたものである。米中の関税合戦や英国のEU離脱といったリスク要因を受けてのリスク回避の動きと、景気そのものの減速懸念、それに対応したFRBの利下げやECBの追加緩和期待などによるものであった。
昨年9月初めがボトムとなって、日本、米国、ドイツ、英国の10年債利回りは反発してきた。その利回り上昇は比較的緩やかなものとなっていたが、戻りのペースとしては日本の10年債利回りの上昇ピッチが比較的速かった。
水準だけからみると、日本の10年債利回りは2019年1月あたりの水準に戻している。それに対して、米国やドイツ、英国の10年債利回りは2019年7月あたりまでの戻りに過ぎない。
これには日銀による長短金利操作付き量的・質的緩和政策が影響している。日銀は長期金利の操作を行っており、そのレンジはプラスマイナス0.2%が下限・上限と認識されている。
マイナス0.3%近くというのはややオーバーシュート気味であったともみられることで、日銀が本来目指しているとみられるゼロ近傍あたりが居所が良いはずである。このため、日本の10年債利回りの戻りが早かったともいえる。
米国やドイツの10年債利回りが今後も上昇していくとしても、日本の10年債利回りはプラス0.1%あたりでブレーキが掛かると予想される。
日本の10年債利回りが大きくマイナスとなる必然性はないものの、足元の物価水準や今後の景気動向などみても、大きく上昇することも考えづらい。そもそも日銀には指し値オペといった伝家の宝刀もあり、ピッチの速い10年債利回り上昇は抑え込んでくるものと予想される。
昨年9月あたりまでの日米欧の長期金利の低下は同じようなかたちとなったが、そこからの戻りはそれぞれかたちが違ってきている。イングランド銀行の利下げ観測も出ているが、EU離脱にも絡んで英国の10年債利回りの動きも今後は異なってくることも予想される。
これからの日米欧の長期金利は次第に連動性が薄れ、それぞれの国の事情を背景に動いてくることが予想される。もちろん何かしらのテールリスクが表面化して、あらためて世界的なリスク回避の動きを強める可能性もないわけではないが、現状、その可能性は薄いのではなかろうか。