超金融緩和時代の終焉、国債バブルは弾けるのか
日本銀行の原田泰審議委員は5日、大分市内での講演後の記者会見で、政府が策定中の経済対策に合わせ、日銀が特に追加緩和を考える必要はないとの見解を示した(ブルームバーグ)。
これはある意味、興味深い発言といえる。原田委員はいわゆるリフレ派である。今回の講演でも、現在の低金利の要因の一部が、過去のデフレ的な金融政策によるものであることを考えれば、といったリフレ派的見解がちりばめられていた。しかし、会見ではなぜか、追加緩和について否定していたのである。
政府の経済対策について、原田委員は「現在の金融緩和政策との相乗効果で、政府の経済対策の効果も日銀の金融緩和政策の効果も高まる」と説明した。それはその通りであるのだが、原田氏の発言だけにむしろ「何で」となってしまう。
今回の政府の経済対策に合わせて、量的緩和策を拡充するのではとの観測も一部にあったが、国債の需給バランスや超長期の金利のある程度の上昇を意識しているとみられる日銀が、いまさら国債の買入を財政政策に呼応して増加させることは考えられない。今回はカレンダーベースで国債発行量が増えるわけでもないはずである。ETFにしても現状の買入がすでに問題視されている。それ以前に、現在の金融政策の調整手段は「金利」としていることで、なにをいまさら「量」なのか。
たしかに黒田総裁は緩和手段として金利だけでなく、量なども挙げている。しかし、量を動かすことはあまり現実的ではない。さらに金利にしても深掘りという行動を見せたい気持ちはわからなくもないが、その結果を考えれば、やらない方が良い。あくまでそのような手段があることを示唆しておけば良い。
それだけ日銀の金融緩和には限界が来ているとの見方もできよう。また、政策手段はあったとしても、それは効果よりも副作用を大きくさせかねない。これは日銀だけでなくECBなども同様となっているようである。
6日付けのブルームバーグの「ECB、マイナス金利への信念に揺らぎか」との記事に、「ECBのドラギ前総裁の置き土産とも言えるマイナス金利を手放しで支持する勢力を見つけるのは、ドラギ氏引退から5週間をへて一段と難しくなった」とあった。
ドラギ総裁はいわゆるハト派というかリフレ的な考え方に共感を持つ人物であったと思う。このため、半ば強引に自らの引き際にも追加緩和を決定した。しかし、これに対してはあまり共感は得られていなかった。むしろドイツなどの委員との対立色を深めることになった。
これに対して、ラガルド新総裁はこの溝を埋める必要がある。ブルームバーグの記事によると、「これまでのドイツとオランダに加え、スペインとイタリアの中銀総裁もマイナス金利に懐疑的な認識を示し始めている」とある。
ECBについてもこれ以上の緩和策は不要との認識を今後強めてくることも予想される。
FRBも利下げは打ち止めとの認識を強めている。トランプ大統領による利下げ圧力が続こうが、ひとまずFRBは独立性を維持し、その要求ははねつけよう。
今後の日米欧の金融政策は景気や物価、さらには地政学的なリスクを含めたもの次第ということにもなるが、超金融緩和政策はさすがにそろそろ終焉を迎えつつあるとの見方もできる。そうであれば、異常な水準に下がり過ぎた長期金利が多少なり戻ってきてもおかしくはない。ここにきて日米欧の長期金利の戻りはそれを示唆したものとの見方もできるのではなかろうか。国債の利回りと価格は反対に動く。つまりそれは裏返せば、異常に上がりすぎた国債価格の調整、いわゆる国債バブルが弾けることにもなりうる。