世界的に株価が上昇し国債価格も同時に上昇していたのは、市場が狂っていたのか、新たなフェーズなのか
11月4日にダウ工業株30種平均が続伸となり、2019年7月15日以来、約3か月半ぶりに史上最高値を更新した。ナスダック総合指数とS&P500種株価指数も連日での最高値更新となった。
また、6日に欧州株式市場の主要株価指数であるストックス欧州600種指数は4年超ぶりの高値をつけ、2015年4月につけた過去最高値に迫ってきた。
東京株式市場では代表的な株価指数である日経平均株価がここにきて年初来高値を更新してきている。ただし、1989年末につけた38915円までにはまだ距離がある。東京株式市場が欧米の株価指数に比べて出遅れ感があるのは、バブルと呼ばれた1989年代後半に土地とともに株価が異常なペースで上昇し、その後その反動も大きかったこともひとつの要因であろう。
景気そのものは米国もそれほど過熱感があるものではなく、これは欧州や日本も同様である。世界景気を引っ張り上げていた新興国の景気そのものもブレーキが掛かっている。
それにもかかわらずこの株高には違和感を持つ人も多いのではなかろうか。ゴルディロックス相場とも呼ばれる過熱感はないものの緩やかな景気拡大が続いている。株価が下げづらくなっているところに、好材料が出るとそれに反応して株価が積み上げられて過去最高値を更新してきたともみえなくもない。
視線を金利に向けるとこちらも異常な状態となっている。株価が最高値を更新しているのと同時に債券価格も過去最高値水準に上昇していた。日本や欧州の国債利回りはマイナスに転じている。債券の価格は利回りと反対に動く。つまり金利がマイナスにまで低下しているということは債券の価格は過去にないほどの値上がりとなってきているといえる。
もちろんこの金利低下の背景には、日米欧の中央銀行による積極的な金融緩和策がある。ECBなど欧州の中央銀行と日本銀行はマイナス金利政策を打ち出した。さらに日米欧の中央銀行は積極的な資産買入を行ったことで国債の需給を極めてタイトにさせて、長期金利を大きく引き下げることになった。
その結果、安全資産の代表の国債の価格とリスク資産であるはずの株価を同時に上昇させてきたのである。これはやはり異様な光景と言わざるを得ない。そもそも景気そのものはゴルディロックス相場とも呼ばれるぐらいに悪くはない。それにもかかわらず、非常時の金融緩和がこの異常な光景を生み出している。
これは市場が狂っているのか、それとも新たなフェーズなのか。市場がおかしい狂っているというのは、あくまで過去との対比による見方となる。むしろ市場は中央銀行の金融緩和などを受けて素直に動いているだけで、異常でもなんでもないとの見方も一方ではできる。新たなフェーズに入っているだけだと。
仮にそうだとしても、この株価と債券の価格上昇はいつか反動が来るであろうことも予想される。上がったものはいずれ下がる。これはフェーズが異なろうといつか起きることが確かなはずである。