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フェイスブックのデジタル通貨、リブラ発行の難しさ

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 フェイスブックが主導するデジタル通貨「リブラ」のサービスについて、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が23日に米議会で「米当局の承認が得られるまではすべての地域で始めない」と明言した(24日付日経新聞電子版)。

 リブラについてはマネーロンダリング(資金洗浄)や、テロや犯罪の資金供給の手段となるといった懸念が以前から指摘されていた。先日の主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、規制・監督上の課題が解決されるまで発行すべきではないとの認識で一致した。

 米当局の承認を得ることはかなりハードルが高く、少なくとも2020年前半とされていた開始が遅れることは確かであろう。そもそも発行そのものも難しくなってきているのではなかろうか。

 ザッカーバーグ氏も米下院公聴会で、「リブラ」を発行する計画が「リスキーだ」と述べ、通貨としての仕組みが複雑なため「稼働するか私も分からない」と言及したそうである(産経新聞)。

 ただし、ザッカーバーグ氏は中国が独自にデジタル通貨への取り組みを進めていることについて「リブラの構想を発表した直後に官民一体で同様のサービスを開発する方針を打ち出した。米国がイノベーションを主導しないと、金融におけるリーダーの地位が危うくなる」と指摘したそうである(日経新聞電子版)。

 こうした意見に対しては一部の共和党議員が同調しており、トランプ政権もこのあたりは意識しているかもしれない。しかし、中国で同様のサービスが開始されても、それに競う必要はない。それがドルやユーロ、円などに取って代わるようなことは考えづらい。ただし、それをきっかけに中国元のデジタル通貨が他の新興国などで流通してくる可能性もないわけではない。

 中国が出すからといって、このままリブラの発行を認めることはやはり、リスクが伴う。デジタル通貨という仕組みはこれからの通貨の仕組みを変えてくるかもしれないが、少なくとも民間が発行するものでは、本来の通貨としての役割を果たすことは難しいのではないかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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