Yahoo!ニュース

ダドリー前NY連銀総裁によるトランプ批判

久保田博幸金融アナリスト
ダドリー前NY連銀総裁(写真:ロイター/アフロ)

 カンザスシティ連銀総裁による熊(トランプ大統領)に餌(金融緩和)を与えるな発言」に続いて、2018年までニューヨーク連銀総裁を務めたビル・ダドリー氏が、利下げは2020年の大統領選挙でトランプ氏の再選を助けるとして、米金融当局はこれを拒否するべきだと提案するコラムを執筆した(ブルームバーグ)。

 このコラムでダドリー氏は次のように語っている。

 「米当局の金融緩和が貿易戦争をさらにエスカレートさせ、リセッション(景気後退)のリスクを高める方向に大統領を促すのなら、話は違ってくる。その場合、打撃を和らげようとする当局の努力は無駄になるだけでなく、事態を悪化させる可能性さえある。」

 トランプ大統領のこれまでの言動を見る限り、来年の大統領選挙も睨み、中国との覇権争いにより米国の優位性を取り戻そうと関税合戦を仕掛けているように思える。それによる景気悪化や、その懸念による株安については、FRBになんとかしろと言っているように思われる。

 「選挙そのものが米金融政策当局の管轄に入るとの主張さえ聞かれる。詰まるところ、トランプ氏の再選は米国と世界の経済、さらには米金融当局の独立性および雇用・インフレの責務達成能力への脅威となり得ることは否めない。」

 大統領選挙の行方がダドリー氏のこの発言によって変わるとは思えないが、この発言内容については大変危惧されるところである。

 ただし、我が国のようにすでに金融政策が政治に取り込まれてしまったようになっているところもあるのも事実である。日本でもカンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁やダドリー前ニューヨーク連銀総裁のようにかみついた当局者もいたが、結局、責任はすべて日銀に押しつけられている状況となっている。

 果たして今後、トランプ大統領とFRBはどのような関係となるのか。熊に餌を与えるなに対し、熊がそれでは餌をくれるトップにすげ替えると言い出すのか。来年の大統領選挙はこのままでは現職のトランプ大統領が優位とみられ、FRBについても独立性が危ぶまれる懸念の方が強いように思われるのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事