FRBによる年内利下げの可能性
18、19日に開催されたFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%のレンジで据え置いた。投票メンバー10人のうち9人が賛成したが、セントルイス連銀のブラード総裁は0.25%の利下げを求めて反対票を投じた。FOMCは2015年末に利上げを再開したが、利下げを求める反対票が出たのは今回が初めて。つまり2017年2月にパウエル新体制となってから初の反対者が出たことにもなる。
セントルイス連銀のブラード総裁は6月3日に、物価上昇率を押し上げ、エスカレートする貿易戦争がもたらす経済への下振れリスクに対応するには、近く政策金利の引き下げが必要になる可能性があると述べていた(ブルームバーグ)。
会合後に公表した声明文では、政策金利の判断において「辛抱強くなる」との文言が削除された。
さらに景気動向について「経済活動は拡大が続くとみているが、先行きは不確実性が増大している」と指摘。金融政策も「不確実性や物価停滞という観点から、今後の経済情報を注視し、経済成長や2%の物価上昇率を持続するため、適切な行動をとるだろう」と明記した(日本経済新聞電子版)。
「辛抱強くなる」との文言が削除されたことにより、正常化路線を歩んできたFRBはブレーキを掛け、次の政策判断は緩和方向に転じたことになる。今後の利上げを見込む委員が、ブラード総裁を含めて増加しており、年内の利下げの可能性が示された。
すでに市場は年内利下げを織り込み、トランプ大統領も利下げに動かないFRBへの批判を強めてきた。FRBはそれに答えるような格好となったが、ニューヨーク連邦準備銀行が17日発表した6月の製造業景況指数(季節調整済み)は前月比26.4ポイント低下のマイナス8.6となり、2016年10月以来の低水準となるなど、景況感の悪化が意識されていることも確かではなかろうか。
市場では今回のFOMCではなく7月開催のFOMCでの利下げの可能性を織り込んでいた。これには6月末のG20サミット(大阪)で予定されている米中首脳会談の行方も確認してからとの判断も働いていたとみられる。
トランプ大統領は、両政府の担当者が19日から具体的な協議を再開するとコメントしていた。首脳会談の結果次第で、制裁関税の対象をほぼすべての中国製品に広げる「第4弾」の発動を先送りするかどうかは明言を避けたが、その可能性はありうる。関税発動先送りとなれば、いったんFRBの早期利下げ観測は後退するかもしれない。
ただし、交渉が決裂した場合には、さらに景況感が悪化する懸念が強まり、7月30、31日に開催予定のFOMCで利下げが検討される可能性がある。