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景況感の悪化を理由としたFRBの利下げの可能性

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ニューヨーク連邦準備銀行が17日発表した6月の製造業景況指数(季節調整済み)は前月比26.4ポイント低下のマイナス8.6となり、2016年10月以来の低水準となった。1か月の下げ幅としては過去最大を記録した(日経新聞電子版)。

 ニューヨーク連銀製造業景気指数とは、ニューヨーク連銀が管轄する地区にある製造業約200社を対象に景況感を調査した結果を指数化したもの。分岐点はゼロでプラスが好況、マイナスが不況となる。製造業の景況感を把握する際に利用される。米国の連邦銀行の中心的な存在でもあるニューヨーク連銀が発表している。ただし、地域はニューヨーク連銀の管轄地域に限られる。

 ISMとの相関が比較的高いことでも知られている。ニューヨーク連銀製造業景気指数(ニューヨーク州)、フィラデルフィア連銀製造業景気指数(ペンシルバニア州、ニュージャージー州、デラウエア州)、ISM製造業景況指数(全国の州)となり、カバーしている地域が多いほど米国全体の景況感が把握できるため、ニューヨーク連銀製造業景気指数の数字のみで判断するというよりも、他の指標を合わせて動向を見ることが多い。

 ちなみに6月3日に発表されたISM製造業景況指数も2016年10月以来の低水準となっていた。

 世界経済の成長減速や在庫の膨らみで製造業は既に厳しい状況にあるとされ、そこに米国と中国の貿易戦争も絡んで、米国内の製造業の景況感はかなり悪化しつつある。

 ニューヨーク連銀の出した経済指標がこのような悪化となったことで、FRBとしてもこれをある程度、金融政策の参考にせざるを得ない。

 6月18、19日のFOMCでは金融政策の現状維持が予想されている。市場では7月のFOMCでの利下げを織り込みつつある。市場やトランプ大統領に追い込まれてではなく、ましては予防的措置というよりも、足元の景況感の悪化を理由にFRBが利下げを示唆してくる可能性はありうるか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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