欧州議会選挙の結果とそれによる影響
1979年にEU市民による直接選挙が導入されて以来、欧州議会選挙は5年に一度行われてきており、9回目の選挙が今回行われた。各加盟国によって選挙日が異なるように、欧州議会選挙法は、選挙の原則(普通、自由、秘密投票、比例代表制など)の大枠のみを規定し、加盟国がそれぞれ欧州議会選挙法細則を定めて選挙を行っている。当選した議員候補者は、議会内の政治会派を結成するための交渉を行います。その上で、新欧州議会(2019年~2024年)が7月2日に招集され、議長と役職者を選出し、任期5年の活動を開始することになっている。(在日欧州連合代表部のサイトの記事より引用)。
今回の欧州議会選挙で注目されたのは、親EU派とされる政党とEU懐疑派とされる政党のバランスとなっていた。1979年の選挙開始以来、議会で大連立を組む中道右派・左派の2大会派は過半数を確保していたが、今回は過半数は割る見通しとなっている。
ただし、移民排斥などを掲げるEU懐疑派の政党は思ったほど拡大できず、結果として親EU派が全体の三分の二は維持する見通しとなった。
この選挙結果に影響を受けるものとして、欧州委員長の後任人事がある。ドイツのメルケル首相はドイツ出身者を送り込もうとしていたが、その目論みが外れる可能性も出てきた。そうなるとECBの総裁人事にも影響を与え、ドイツ連銀総裁のワイトマン氏が次期総裁候補として再浮上してくることも予想される。
今回の欧州議会選挙の結果は、加盟国の政局にも影響を与えることになる。欧州議会選挙で、イタリアは与党・極右「同盟」が得票率34%で第1党に躍進した。同盟はEUで台風の目になる可能性があるとされ、まず真っ先に欧州のEU懐疑派を集め、「連合づくり」に着手した(NHK)。
今回の選挙にはEUをまだ離脱していない英国も参加している。欧州議会選挙の開票の結果、英国ではEUからの離脱(ブレグジット)を掲げるブレグジット党が最多議席を獲得し、EUへの残留を主張する自由民主党がそれに次ぐ見通しとなっている。国内2大政党の与党・保守党と最大野党・労働党は、共に大きく議席を減らす見込み(BBC)。
この英国での結果をみても、英国のEU離脱がかなり困難を極め、合意なき離脱の可能性も強まることが予想される。英国の政治の勢力図が大きく変わることを示唆しているような結果ともなっている。
今回の欧州議会選挙の結果は、市場に動揺を与えるようなものとはなってはいない。しかし、この結果が、欧州委員長やECB総裁の人事の行方に影響を与えることも予想され、まとまらないとされるEU懐疑派の動向如何では、波乱要因ともなりかねないため、注意も必要となりそうである。