中国による米国債保有額が減少、米中貿易戦争との関連は?
米国の財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)によると、3月末時点の米国債保有国のトップは引き続き中国となっていたが、保有額そのものは前月比で、104億ドル減少していた。
国、米国債保有額、前月比(単位、10億ドル)
中国(China, Mainland) 1120.5-10.4
日本(Japan) 1078.1 +5.7
英国(United Kingdom) 317.1 33.3
ブラジル(Brazil) 311.7 +4
アイルランド(Ireland) 277.6 +3.5
ルクセンブルク(Luxembourg) 230.2 +3.4
スイス(Switzerland) 226.4 +0.5
ケイマン諸島(Cayman Islands) 219.5 +9.4
香港(Hong Kong) 207.6 +5.2
ベルギー(Belgium) 186.6 +4.6
海外による米国債保有額全体は増加しているなかにあって、中国の減少幅が目立っていることは確かである。3月時点では米国と中国の貿易摩擦が表面化していたわけではない、しかし、中国の外貨準備高は3月末時点で3兆988億ドルと前月末比85億8000万ドル増え、5か月連続での外貨準備高増加となったことを考慮すると、何かしらの要因によって中国が米国債の保有比率を減少させていた可能性はある。
これは中国の保有資産の分散化の一環とも考えられ、中国の金の保有額など増加していることで、別な資産に資金を振り向けていると予想される。
しかし、5月に米中の通商交渉がいったん物別れに終わったこともあり、米国の強硬姿勢に対抗するため、中国が今後、米国債の売却を急ぐ可能性も否定はできない。ただし、これを交渉の切り札にすることにもリスクはあり、米国債市場への影響も出てくることで自分で自分の首を絞めかねないことになることも確かではある。
2位は日本で変わりはなく、日本は前月比で57億ドル増加させていた。
実は中国より注目すべきは今回は英国であったかもしれない。英国は前月比で333億ドルも米国債保有を増加させていたのである。英国のEU離脱を控え、保有資産をより安全な米国債に移管させてきた可能性もある。