日銀によるフォワードガイダンスの明確化
日銀は25日の金融政策決定会合において、いくつかの修正を行ってきた。特に注目されたのが、「政策金利のフォワードガイダンスの明確化」となる。これは2018年7月31日の金融政策決定会合において設定した「政策金利のフォワードガイダンス」をより明確化したものといえる。
念のため、日銀の金融政策決定会合において政策変更とされる際には、決定会合後に公表される公表文のタイトルにその旨が表記される。たとえば2016年9月21日の公表文のタイトルは『金融緩和強化のための新しい枠組み:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」』となっていた。また、「政策金利のフォワードガイダンス」を設定した2018年7月31日のタイトルも「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」となっていた。それに対して変更がない場合は常に「当面の金融政策運営について」となっている。
今回の4月25日の公表文のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み再強化」とかではなくて、「当面の金融政策運営について」となっていた。従って緩和強化ではなく、あくまで「明確化」が今回の狙いであったといえる。
2018年7月31日のフォワードガイダンスと今回のフォワードガイダンスを見比べてみたい。
2018年7月31日 「日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」
2019年4月25日 「日本銀行は、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」
「2019年10月に予定されている」との文面が消えている。これは消費増税が延期されたときのヘッジとかではなく、消費増税が予定通り施行されることを前提に、時期もせまっていることであえて時期の説明をなくしたものと思われる。
「海外経済の動向」が加わったが、これは昨年末以降のFRBのあたふたした姿勢にもみられ、ECBも同様ながら、欧州や中国の景気減速観測がリスク要因として特に昨年末にかけて意識されており、日銀としても警戒せざるを得ないためといえよう。米国の株価はここにきて戻ってきてはいるが。
「当分の間」について今回は具体的な時期が示された。少なくとも2020年春頃まで、現在の緩和姿勢を維持することを示した。消費増税の影響を見極めるには半年程度の期間が必要との見方であろうか。
ちなみに展望レポートでは2021年の消費者物価指数(除く生鮮)が示されたが、年率で前年比プラス1.6%という予測であり、あくまで予測上ではあるが、2021年でも2%の物価目標に届くとはみていない。しかし、今回の示された期間は「少なくとも」が付くが「2020年春頃まで」となっている。
2020年春頃以降については、環境次第では政策修正の可能性を示しているとの見方もできなくはない。しかし、現状の物価目標がそのままで、足元の物価との乖離等を考慮すると、2%の物価目標達成はほとんど見えてこない。現実には2%という目標達成という厳格な看板を下ろさないと動くに動けない。異次元緩和を可能にさせる期間を延長させるための工夫も今回は盛り込まれていた。