日本では50年国債より60年国債の発行のほうが可能性が高いのでは?
日本で償還までの期間が最も長い50年という社債を、大手不動産会社、三菱地所が発行することになったとNHKや日経新聞が報じた。
通常、社債の発行や売買に関しては、同年限の国債利回りが基準となり、ここから信用度などに応じて上乗せ分の利回りが算出される。通常はその上乗せ金利で取引を行うといった慣習となっている。
しかし、今回の期間50年の社債にはベンチマークとなるはずの同期間の国債は存在しない。このためイールドカーブを推計で延長するようなかたちで金利を決定するとみられる。ただし、これにはそれを購入する投資家、その投資家と発行体を繋ぐ幹事証券などの意向も当然働くことになる。今回の三菱地所の50年債の利回りは、格付けも高いことも加味された上で、1%台になる見込みのようである。
以前にも30年国債が発行される以前に30年の社債が発行される事例もあったことで、今回が特別な事例ではない。ただし、30年の社債発行後に30年の国債が発行されており、今回、三菱地所が50年債を発行するとなれば、50年国債発行への期待が出てくる可能性がある。
債券の発行体にとっては低金利のときになるべく長い期間で資金を借り入れておきたいとの意向も働こう。さらに現在のように期間10年の国債までマイナスとなっている状況下、資金を運用する金融機関などにとって、所有期間リスクを取ることになっても、プラスの運用利回りは魅力的に映ろう。
ただし、国債の場合は発行体は国であり、財務省が担当している点に注意すると、実は切りの良い50年の国債よりも60年の国債の方が可能性が高いのではないかと思われる。
建設国債と赤字国債には60年償還ルールがあるためである。1965年度に戦後初めて発行された国債(7年債)は、その満期が到来する1972年度に全額現金償還されたが、1966年度以降に発行された建設国債については、発行時の償還期限にかかわらず、すべて60年かけて償還される仕組みが導入された。それが赤字国債にも適用された。
たとえば10年国債が発行されても、10年後に現金で償還されるのは六分の一だけで、残りについては借換債と呼ばれる国債が発行される。つまり60年かけて建設国債と赤字国債は償還される仕組みとなっている。60年というのは公共事業によって建設された物の平均的な効用発揮期間、つまり使用に耐えられる期間が、概ね60年と考えられたためである。
借換債の発行とその管理は建設国債と赤字国債が発行されればされるほど複雑となってくる。しかし、期間60年の国債であれば、借換債の発行は必要なくなり、より管理しやすくなるという利点がある。