Yahoo!ニュース

QRコード決済における統一規格の動き

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 19日付けの日経新聞によると、経済産業省と産学官が立ち上げたキャッシュレス推進協議会が29日にもQRコード決済の統一規格を発表するそうである。

 ここにきてQRコードの決済方式が乱立している。LINE Pay、PayPay、楽天ペイ、Origamiなどに加えて、みずほ銀行は2019年3月にJコインペイを開始する予定で、7月ごろにファミマペイ、セブンペイとコンビニ系、またヨドバシカメラもヨドペイを開始するとの観測も出ている。

 現在、日本の事業者が行っている上記のQRコード決済では、どのように数字を発行するかの決まりはない。QRコード決済とは、店舗か顧客が提示するQRコードに12桁前後の数字などの情報が埋め込まれており、それを読みとることで支払いが完了する。異なる事業者が顧客に対して同じ番号のQRコードを発行していれば、誤請求が起きる危険性が発生する。

 クレジットカードなどでは、決済事業者ごとに他社と重複しない番号を割り当てた上で、事業者は利用者ごとに下何桁かの数字を加えた番号を決める形式となっている。

 クレジットカードの番号は、ISO/IEC 7812という国際規格に定められた規則に基づいて決められている。先頭の6桁の番号はプレフィックスと呼ばれ、カードの属性を表している。つまり最初の6桁でカードの種類を区別や分類ができる。これはIIN (Issuer Identifier Number、発行者識別番号)、またはBIN (Bank Identification Number、銀行識別番号) であり、クレジットカードを発行した企業や団体が識別可能となる番号となっている。そして、7桁目から最終2桁目までは、個別の口座番号が割り振られている。

 JCBなどの国際ブランドのカードを発行している事業者はすでに割り振られた番号を持っているが、新規参入の事業者は手数料を支払って新たに番号を発行してもらう必要がある。システムにかかる費用を安価に抑えてこれを実現してきた日本の事業者は、クレジットカードと同等の仕組みを求められることに反発していた。(日経新聞)。

 QRコード決済の発達した中国でも結局は、不正利用を防ぐために、クレジットカードなど既存の決済事業者の意見が採用されて、高コストながらセキュリティーを重視する仕組みとなったそうである。

 ただし、統一したQRコードであれば、すべての事業者のQRコード決済が使えるわけではなく、加盟店がそれぞれの事業者と契約を結ぶ必要がある。これはクレジットカードも同様で、たとえば、この店ではVISAは使えるがJCBは使えないといったことと同様となる。

 今回の統一規格を事業者が採用する義務はまだない。費用負担を嫌がり採用しない事業者が出てくれば、規格の統一も骨抜きになる可能性があると、日経新聞は指摘している。

 中国も乱立していたQRコード決済が2つ程度のQRコード決済に絞られてきたことで使い勝手が向上したとみられる。日本ではまだQRコード決済の普及については過渡期にあるともいえる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事