世界的な景気減速観測と金融市場の行方
中国国家統計局が21日に発表した2018年の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年比6.6%増となり、天安門事件の影響で経済が落ち込んだ1990年の3.9%増以来、28年ぶりの低水準となった(毎日新聞)。
また、韓国銀行が22日に発表した韓国の2018年の国内総生産(速報値)は実質ベースで前年比2.7%増となった。3年ぶりの減速で2012年以来、6年ぶりの低水準となった。半導体景気が失速し、建設投資も息切れしたことが響いた(日経新聞)。
IMFが21日発表した最新の世界経済見通しにおいて、2019年の世界経済の成長率を3.5%と、昨年10月時点に比べ0.2ポイント下方修正した。欧州のドイツとイタリア経済の弱さなどが指摘されていた。
米国経済も米中貿易摩擦による影響に加え、長期化する政府機関閉鎖の影響などが出ることも予想される。こちらも景気拡大に寄与していたアップルなど大手ハイテク企業を中心に業績悪化が懸念されている。
世界経済の拡大によって日本経済は支えられてきたが、その支えを失うとなれば、国内景気も低迷することが予想される。
世界的な景気減速を先読みしてか12月末に向けて米国株式市場は大きく調整し、年初にドル円は一時105円割れとなった。しかし、米国のトランプ大統領が12月25日に「まさに素晴らしい(株の)買いの好機だ」と主張したあたりから、持ち直してきた。この背景には米中通商交渉への期待などもあったろうが、売られすぎの反動といった面もあろう。
しかし、世界的な景気減速への懸念は今後、むしろ強まり、英国のEU離脱の行方の不透明感は残り、米国の壁問題とそれによる政府機関閉鎖による影響も払拭されることはなく、さらには米中の貿易摩擦が完全に解消に向かうことも考えられず、今後、金融市場は再びリスク回避の動きを強めることが予想される。
今回の世界的な景気減速が一時的な調整に止まるのか、それとも大きなトレンドが変化してくるのか。今年はそれを見極める年となりそうである。
日米欧の中央銀行による大胆な金融緩和政策は、日銀を除いてあくまで世界的な金融経済危機による影響を緩和するためのものであった。その政策の手じまいを行っているなかにあって、再び異常な緩和策に頼ることにも無理はある。よほどの危機が起きない限りは、せいぜい正常化のスピードを緩めることぐらいしかできないはずである。財政政策にも限界があることで、市場もこのあたりを見透かした動きとなってくる可能性もある。