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英国のEU離脱問題で英国債はどちらに向かうのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Shutterstock/アフロ)

 英国の議会下院は日本時間16日早朝に欧州連合(EU)と合意したEU離脱案を採決し、投票結果は賛成202票、反対432票となり、政府の離脱案は歴史的大差で否決された。野党労働党のコービン党首はメイ政権に対して内閣不信任案を提出したが、こちらも否決された。メイ首相は、期間が限られるなかあらためて合意なき離脱に向けた道筋を探ることになる。

 英国がどのようなかたちでEUを離脱するのか。3月29日の離脱期日までに議会での承認を得られるのか、それとも離脱期日の延期を探るのか、場合によると合意なき離脱となってしまう可能性もありうる。

 このような英国のEU離脱を巡る不透明感が強まるなか、英国債は果たしてどのような動きを示すのか。

 EU離脱案は否決されるであろうとみられていた15日の英国の10年債利回りは1.25%と前日の1.29%から低下していた。実際に否決されたことを確認しての16日の英国の10年債利回りは1.31%と前日の1.25%から今度は上昇していた。

 市場では合意なき離脱の可能性が後退したことで、外為市場ではポンドが買い戻されていた。このポンド高によって16日のロンドン株式市場は輸出関連株主体に下落していた。16日には同時に英国債も売られた格好ながら、動きはややチグハグにみえる。

 英国債そのものは米国やドイツなどの国債と同様に信用度は高い。このため、自国のリスクが増大しても、リスク回避の動きにより買われやすい。この動きは日本国債も同様にあった。英国そのものの信用が大きく毀損されない限り、英国債は基本的にはリスク時に買われやすいものといえる。また、同様の理由から米国債の動きに連動しやすい面もある。

 とはいえ、一時的にせよ英国売りが生じた際には状況が変わる可能性はある。1992年のヘッジファンドが大量のポンド売りマルク買いを仕掛けた、いわゆるポンド危機の際には、イングランド銀行は日中に当時の政策金利であった公定歩合を2度引き上げるなどの対抗手段を取っていた。当時のような状況に陥る可能性は低いとみられるものの、状況次第では英国債が一時的に大きく売られるという事態もないとは限らない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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