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そっと更新されていたアベノミクス

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 先日、ツイッターで興味深いツイートがあった。首相官邸のアベノミクス「3本の矢」というページが更新されなくなっていたというのである。そのページを確認してみると、下記のようになっていた。

 「このページは現在更新しておりません。「日本再興戦略」改訂2014(成長戦略2014)の内容をわかりやすく解説したページです。最新の情報は、こちらをご覧ください。」

アベノミクス「3本の矢」

 この表現を見る限り、すでにアベノミクスは一定の役割を終えて、次のステージに移行しているかのような記述となっている。更新されなくなったアベノミクス「3本の矢」の成果については下記の表現があった。

 「すでに第1の矢と第2の矢は放たれ、アベノミクス効果もあって、株価、経済成長率、企業業績、雇用等、多くの経済指標は、著しい改善を見せています。また、アベノミクスの本丸となる「成長戦略」の施策が順次実行され、その効果も表れつつあります。」

 肝心の「物価」はどこに行ったのか。日銀による非常時対応というべき異次元緩和は2%という物価目標達成のために、政府の意向を汲んで行われたものであった。2本目の経済政策についても具体的な成果は見えないなか、金融政策の異常さだけが際立っている。そしていつのまにか本丸が「成長戦略」になっていた。

 その異常な金融政策を行っても、目標とした物価上昇はなかったが、結果として株価、経済成長率、企業業績、雇用等が改善したと結論づけるのはおかしくはないか。仮にそうであったとして、その具体的な経路についての説明が求められよう。

 そして、「最新の情報は、こちらをご覧ください。」とのリンク先にあるのは、「アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!」というページである。

 「平成30年6月15日、「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革に向けて、未来投資戦略2018を閣議決定しました。「未来投資戦略2018」では、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの第4次産業革命の技術革新を存分に取り込み、「Society 5.0」を本格的に実現するため、各種の施策の着実な実施を図りつつ、これまでの取組の再構築、新たな仕組みの導入を図ります。」

 どうやらこれが「アベノミクス改」であるようである。もし当初のアベノミクス「3本の矢」が期待された成果が得られ、このため次のステージに移行したというのであれば、日銀の異常な金融緩和政策をより柔軟化させても問題はないということであろうか。そうであれば、その副作用を早めに軽減させるために日銀が動いても政府は干渉しないということで良いのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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