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災害時に弱いキャッシュレス決済、その対策とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 キャッシュレス決済の普及に向け企業や学識者、自治体などが設立した「キャッシュレス推進協議会」は、15日に初めて開いた総会で停電対策に協力して取り組むことになったとNHKが伝えている。

 北海道では先月6日の地震に伴う大規模停電で、電子マネーを使った決済が長いところでは数日間、できなくなった。電子マネーはコンピューター上で管理されているものであり、停電によりホストコンピューターとの接続が切れることで利用できなくなる。

 クレジットカードも現在では専用端末を通すことでリアルタイムでチェックが可能となるため、「インプリンター」と呼ばれる紙の伝票に印字する機器を使っているところは少なくなっている。

 レジについてもホストコンピューターと繋がっているレジがスーパーやコンビニなどで多く使われているかと思われる。そのため、停電となれば使用できなくなってしまう。非常用電源を準備していたところも、それで賄える数時間だけとなっていたようである。

 ただし、9月の北海道での地震の際に、コンビニのセイコーマートでは停電にもかかわらず、普通のガソリン車のシガーソケットから給電するなどして停電中もレジなどの利用を可能にしていたようである。

 停電時の決済への対応については、それを事前準備していたセイコーマートの事例も参考になろう。大手コンビニでは数時間は自家用発電でまかなっていたようだが、少なくとも数日程度はレジなどを動かせるような工夫も求められよう。

 停電の際の対策としては、決済データをやり取りをする専用の通信端末などに蓄電池を設置して電源を確保することがあげられているとか(NHK)。ただし、これについても災害時には携帯電話の回線が混雑することで通信がしっかりできるかどうかという問題もありそうである。

 そして決済だけでなく、キャッシュそのものを引きだそうとしてもATMが停電時には利用ができなくなってしまう。日本はキャッシュレス化が遅れているといわれながらも、電子マネーの普及やコンビニのATMの普及により、財布に多額の現金を持つことが少なくなっている。このため災害時にはこれも困った問題となる。

 店舗では釣り銭が足りなくなるという問題もある。小額硬貨、いわば小銭については電子マネーの普及で流通量はこの10年間に5%以上減少しているとされる。店側からすると、もしものことを考えて、ある程度小銭を蓄えるというのも難しい面があるが、多少多めに置いておくことも考慮すべきかもしれない。それとともに我々も、もしもに備えて財布にはやや多めに現金を忍ばせることも対策として必要になろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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