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天丼の「てんや」でインバウンドを睨んだキャッシュレス化の試みが始まる

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日銀は9月28日に「キャッシュレス決済の現状」というレポートを発表した。この要旨のなかに次のような指摘があった。

 「日本は従来から、ドイツなどと共に、現金志向の強い国と捉えられてきた。もっとも日本でも、支払決済の効率化やデータの活用、インバウンド消費の取り込みなどを企図した、キャッシュレス決済推進の取り組みが活発化している。政府も、キャッシュレス化に向けた取り組みを進めている。」

 訪日外国観光客の増加や2020年のオリンピック・パラリンピックなどを控え、インバウンド消費の取り込みなどを企図したキャッシュレス決済推進の取り組みの事例として、天丼チェーンの「てんや」が完全キャッシュレスの店を試験導入することも挙げられよう。

 朝日新聞の記事によると、客の9割が訪日外国人という東京・浅草雷門店を改装し、2日に開いた「てんや」では、注文は、入り口近くのタブレット端末で行い、会計には、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどを利用する。主に中国で使われる決済サービス「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」も使うことができるようである。

 国内でのQRコードを使ったキャッシュレス化は、いろいろと進められているが、普及についてはいまひとつといったところとなっている。しかし、キャッシュレス化が進んでいる中国などの観光客にとっては、現金利用が主体の日本での買い物は不便なものとなっていよう。

 Origamiは銀聯国際と資本業務提携し、アジア太平洋地域、北米、中央アジア、中東、アフリカなど24の国と地域の750万を超える店舗で、銀聯QR決済のネットワークを利用したOrigami Payでの決済を実現すると発表した。国内においても、Origami加盟店での銀聯QR決済の利用を可能とするそうである。このように、インバウンドだけでなくアウトバウンドも睨んだ動きも出ている。

 現金志向の強い日本ではなかなかQRコードを利用したスマホ決済の利用が拡大してこない。しかし、国内の海外観光客向けとしてインバウンドを睨んでのキャッシュレス化が進み、今度は海外での日本人観光客がキャッシュレス決済の便利を体験してくるとなれば、いずれ日本でのスマホを利用してのキャッシュレス決済が一気に拡大してくる可能性はあるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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