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日経平均はバブル崩壊後の高値を更新。25000円も視野に入るが、慎重にみる必要も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 9月28日の東京株式市場で、日経平均は先物への買いなどから上げ幅を拡大させ、1月23日の日中(ザラ場中)での年初来高値を更新し、1991年11月以来の水準まで上昇し、バブル崩壊後の戻り高値を付けた。

 そして10月1日には、ドル円は114円に接近したことや、カナダと米国が北米自由貿易協定枠組みで合意したことにより、米株指数が上昇。これを受けて、日経平均の引けは125円高となり、引け値でも約27年ぶりにバブル崩壊後の高値を更新した。

 日経平均が年初来高値を更新し、約27年ぶりにバブル崩壊後の高値をつけたのは何故か。これは日経平均の日足チャートと米国のダウ平均やドル円の日足チャートを比べるとその理由が見えてくる。

 起点となったのは9月18日の東京株式市場となる。この日、トランプ政権は2000億ドル相当の中国製品への追加関税を24日から課すと発表。中国も報復措置として600億ドル相当の米国製品に関税を24日から課すと発表した。しかし、18日の日経平均は米中の貿易摩擦激化を悪材料視して売られたのは一時的で、むしろ大きく上昇したのである。これは日経平均が23000円という大台を超えていたことで、テクニカル的な先物への買い戻しの動きが入ったともいえるが、米中貿易摩擦による日本経済への影響はそれほど大きくはなく、米国を主体とした景気拡大が続くとの見方が背景にあった。

 18日の東京市場を含めてアジアの株式市場がしっかりしていたことで、18日のダウ平均は184ドル高となり、ここから再び上昇トレンドを形成した。20日のダウ平均は8か月ぶりに最高値を更新。米長期金利が3%台で推移していたこともあり、ドル円も上昇基調となり、これも東京株式市場の押し上げ要因となった。

 米長期金利の背景には9月26日のFOMCで今年3回目の利上げが決定されたことや、その背景となっていた「とりわけ輝かしい局面にある米経済」(パウエルFRB議長)がある。

 出遅れ感もあった東京株式市場もここにきて息を吹き返してきたのは、米国を主体とした米経済の拡大傾向や、米長期金利上昇などを背景とした円安などがあろう。

 ただし、注意すべきは10月1日の日銀短観で大企業・製造業DIがプラス19と、前回6月調査のプラス21から2ポイント悪化した点である。日経平均のトレンドには、この日銀短観の大企業・製造業DIと重なり合うことが多い。日経平均のトレンド変化から日銀短観も前回から改善かとみていたが、むしろ悪化した。台風21号や北海道地震など相次いだ自然災害などによる影響も考えられるものの、米国などに比べ日本の景気はそれほど輝かしいわけではなさそうである。このため、ここからの日経平均の動きは慎重にみる必要はある。ただし、チャートなどからみてのテクニカルな動きを背景に、ひとまず25000円あたりまでの上昇ならば十分にありうるのではないかとみている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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