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原油先物価格は70ドル近辺で落ち着きどころを探る

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ここにきて原油先物価格が乱高下している。たとえば7月29日には、米国内での増産傾向に対する警戒感などから原油先物は売られ、WTI先物9月限は92セント安の68.69ドルとなった。翌30日には原油の供給停滞懸念などから、原油先物は大幅反発し、WTI先物9月限は1.44ドル高の70.13ドルと70ドル台を回復。31日にはOPECの7月の産油量が増加したことなどから、今度は大きく下落し、WTI先物9月限は1.37ドル安の68.76ドルとなった。

 8月に入り1日は原油在庫が予想外に増加したことやサウジの増産などを受け、原油先物は大幅続落となり、WTI先物9月限は1.10ドル安の67.66ドル。2日はイランが数日内にホルムズ海峡で軍事演習を行うとの報道やWTIの受け渡し拠点である米オクラホマ州クッシングの在庫減少を受け、原油先物は大幅反発、WTI先物9月限は1.30ドル高の68.96ドルとなった。3日は米中の貿易摩擦激化への懸念などから売られ、WTI先物9月限は47セント安の68.49ドル。6日はサウジアラビアの7月の生産量が前月比で減少したとの観測などから上昇し、WTI先物9月限は52セント高の69.01ドルとなった。

 WTIは前日比でみると1ドル以上の上げ下げが何日かあった。原油先物市場そのものがそれほど大きくはなく、やや投機的な動きが入ると乱高下しやすい面はある。ただし、WTIは上げ下げはしているものの、水準は70ドル近くでのものとなっており、トレンドが大きく変わってきたわけではない。むしろ水準としては70ドル近くで落ち着いてきたように思われる。

 日々の動きの要因をみるとOPECなどの増産についての不透明感に加え、トランプ政権のイランに対する強攻策なども材料視されての動きとなっている。ただし、それはあくまで日々の動きの要因となっていることで、原油先物でみるとこの70ドル近くが居所が良いのかもしれない。

 70ドルはサウジアラビアの財政均衡点とも言われており、サウジアラビアはここを目指して減産を主導して調整してきたように思われる。ただし、70ドルを大きく上回るとガソリン価格の上昇などから、世界経済に悪影響を及ぼしかねない。このため、このあたりで落ち着いてもらうのが、産油国としても好都合なのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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