日銀の政策変更を受けて、今後の住宅ローン金利はどう動くのか
7月31日の日銀金融政策決定会合では、これまでの長短金利操作付き量的・質的緩和政策の大枠はそのままに、内容の一部を修正してきた。
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)については、大枠に変更はないものの、「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし」、指し値オペの水準レンジを拡げることを示した。この水準は黒田総裁の会見から、これまでの倍との表現が出ており、それはマイナス0.1%からプラス0.1%とのレンジが、マイナス0.2%からプラス0.2%ということになる。ただし、市場では10年債利回りのマイナス化は望んでおらず、このため実質的にはゼロからプラス0.2%ということになる。
これを受けて8月1日に10年債利回りは0.120%に上昇し、2日の朝には0.145%まで上昇してきたが、いずれ0.200%近くまで上昇してくる可能性がある。
この長期金利の上昇を受けて早速、住宅ローン金利に動きが出た。テレビ朝日は次のように報じている。
「りそな銀行は1日から、10年固定・最優遇の住宅ローン金利を0.05%引き上げて年0.75%にします。また、みずほ銀行と三井住友銀行、三井住友信託銀行も10年固定の金利は据え置いたものの、15年以上の金利をそれぞれ0.05%引き上げます。」(テレビ朝日)
さすがに引き上げる際の動きは速い。今後も10年債利回りはさらに上昇してくる可能性があるため、それに応じて固定タイプの金利は引き上げられる可能性がある。ただし、いまのところ長期金利の上限は0.2%とされることで、0.2%を超えてさらに長期金利が上昇してくることは考えづらい。
それでは変動タイプの金利はどうなるであろうか。変動タイプの金利は短期プライムレートに連動することで、政策金利であるところの短期金利の動き次第ということになる。
今回の政策変更では短期金利については、マイナス金利を適用するとの表現に変化はない。ただし、マイナス金利が適用される政策金利残高を、長短金利操作の実現に支障がない範囲で、現在の水準(平均して10兆円程度)から5兆円程度に減少させるとしている。これはつまりマイナス金利が適用される部分が縮小されることになる。これにより短期金利のマイナス幅がやや縮小されるとみられる。
日銀は今回、現在の緩和策を継続することによる累積的な副作用を軽減させるための柔軟化措置を行ってきた。今回の公表文のタイトルが「当面の金融政策運営について」ではなかったことから、タイトルを見る限り、政策変更ということになりうる。個人的には今回、見えないかたちでブレーキを掛けつつあるとの見方をしている。
「現在のきわめて低い長短金利の水準」が今回の政策変更にてある程度柔軟化された。そうはいってもマイナス金利政策そのものは当面続くとみられることで、短期金利についてはそれほど大きな動きはないと思われる。
ただし、いずれ日銀は金利の引き上げに動く可能性はある。それまでにはある程度の期間も必要となる。安倍政権が続く限りはアベノミクスの呪縛から日銀は抜け出せないため、数年間は大きくは動けないかもしれない。それでも10年、20年というタームでみれば、短期金利もいずれ上昇してくる可能性はありうる。