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日本の国債市場の機能低下に対する市場からの悲痛な声

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 25日に開催された国債市場特別参加者会合の議事要旨が財務省のサイトにアップされている。国債市場特別参加者はプライマリー・ディーラーとも呼ばれ国債入札に参加する主要な業者となる。

 国債市場特別参加者会合での「最近の国債市場の状況と今後の見通しについて」に関しては次のような意見が出されていた。

 「市場機能が落ちてきていると言わざるを得ないとの認識を持っている。また、入札後のパフォーマンスがよくない中で、証券会社の体力が落ちており、市中での売買もかなり減少している。このような状況がこのまま継続してしまうことに危機感を抱いている。」

 「市場機能が失われ、市場参加者が減ってしまうと、何かイベントが起きたときに、受け皿になるような参加者がいなくなり、大きなボラティリティを生み出すのではないかと懸念している。市場機能をいかに残していくのかということを真剣に考えていかなくてはならないとの問題意識を持っている。」

 「ボラティリティが非常に低い状況がこのまま続いていくと、債券部門における収益が低下し、同部門に割り当てられるバランスシートの金額も減少する。こうした低金利・低ボラティリティ・低収益の状況が続くことにより、金利が動いたときの受け皿となるマーケットの深みが失われることを懸念しており、当局においても注視してほしい。」

 「外部環境に関係なく、日銀買入オペに依存した取引が中心になっており、マーケットとして重要な価格発見機能が失われていると考えている。また、ファンダメンタルズからかけ離れた低金利と低ボラティリティの長期化によって、収益性が乏しくなった国債売買への興味が大きく低下しており、市場参加者も減少している。」

 「業者間のカレント銘柄の売買がほとんど行われておらず、このような状況が続くことによって、収益性が低下し、バランスシート・資本・人員といった面で債券部門への割り当てを考え直さざるを得なくなってきている。」

 これをみてもわかるように市場参加者は国債市場の機能低下に対してかなりの危機感を抱いている。2年国債や5年国債のカレントは出合いのない日も多く、10年国債カレントも出合っても1本値という状態が続いている。28日の債券先物の日中値幅はわずか3銭しかなく、記録的な小ささとなってしまっている。

 この状態が続くと投資先としての国債の魅力が失われ、国債市場への関心も後退することで、ますます日銀の出口政策をやりにくくさせかねない。日銀は異次元緩和策の枠内で、もう少し長期金利が動くようにレンジを調節するなりの対応が求められよう。しかもできるだけ早く。それほど国債の市場機能は低下してしまっていると言わざるを得ない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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