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4月以降の金融市場動向を占う

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 今年に入ってからの金融市場は波乱含みの様相を強めている。米国株式市場はボラティリティ(相場の変動率)が低い状態で長らく上昇基調が継続し、これはゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていたが、その反動が2月あたりから起きている。

 一度、ボラティリティが大きくなると、その状態がある程度継続する。このため、ちょっとした材料で振れが大きくなりやすい。米国ではトランプ大統領が異例の輸入制限措置を発動したことなどで火に油を注ぐ格好となった。これまで上昇相場を支えていたハイテク株の一角に悪材料が出たことも波乱相場の要因となった。

 米債については米株の大きな調整もあり、リスク回避の動きから10年債利回りは3%を前にして反落している。ただし、基調としてはまだ上昇トレンドは描いているように思われる。

 外為市場でのドル円の動きをみると、こちらもリスク回避の動きなどから円買いドル売りが進み、ドル円は1月の113円台から3月に入り104円台にまで下落している。ユーロ円も2月の137円台から3月に128円台に下落していたことで、円高が進行していた。

 4月以降の相場を占う上での注意すべきものに北朝鮮の動向がある。4月27日に南北首脳会談が開催される。そのあと5月には米朝首脳会談も予定されている。北朝鮮がこれらの会議でどのような姿勢をみせるのかは不透明ながら、北朝鮮の地政学的リスクが後退してくる可能性がある。

 米国株式市場はトランプ政権そのものがリスク要因となっているようにみえるが、中国との貿易摩擦については水面下での交渉も進んでいるようで、いまのところエスカレートする気配はない。米国の景気そのものも拡大基調は継続してくると思われる。荒れた相場ではあるが、時間の経過とともに落ち着きを取り戻してくる可能性もあり、落ち着きどころを探る展開となるのではないかと思われる。

 米債については10年債利回りが3%手前で跳ね返された格好ながら、FRBの利上げ基調に変化が見られない限りは、大きく低下することも考えづらい。リスク回避による金利低下にも限度はありそうで、いずれ再び3%をうかがうような動きとなるのではなかろうか。

 原油価格が今後さらに上昇してくる可能性もあり、物価が緩やかながらも上昇してくると、米金利上昇をフォローしてくる格好になるのではなかろうか。

 ドル円についてはリスク回避による円買いの動きはそろそろブレーキが掛かるのではなかろうか。日銀が出口政策を封じ込めていることも円を買いにくくさせるとみられる。ただし、4月の金融政策決定会合からは新たな副総裁に代わることで、何かしらの変化が出てくるのかもしれない。

 東京株式市場は米株やドル円などの動向次第ながら、底堅い動きとなるのではなかろうか。

 円債については日銀の出口封じ込め政策により膠着相場が継続するとみられる。ただし、安倍政権の動向次第では動きに変化が出てくる可能性もあるため注意したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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