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ECBの次期総裁はドイツから?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)は19日に、今年の5月末に退任するコンスタンシオECB副総裁の後任としてスペインのデギンドス経済相を選定した。これにより2019年に任期満了となるドラギ総裁の後任には、ドイツなどユーロ圏北部出身者が選ばれる公算が高くなった。ECBは総裁も副総裁も任期は8年と長い。

 3月の欧州連合(EU)首脳会議で正式決定し、デギンドス氏はコンスタンシオ副総裁の後任として6月1日に就任する予定となっている。

 日経新聞によるとECBの副総裁ポストはアイルランド中銀総裁のレーン氏とデギンドス氏が争っていたが、形勢不利とみたアイルランドがレーン氏の立候補を取り消したことで、デギンドス氏に決まった。欧州議会では「レーン氏の方がふさわしい」という意見もあったが、ドイツなどに押し切られたそうである。レーン氏はECBのチーフエコノミスト(専務理事)に就くとの見方がある。

 日銀も総裁と副総裁のポストはある程度、バランスが考慮される。総裁は財務省出身者と日銀プロパーの交替制の時期もあったが、現在はそのようなパターンではなくなっている。しかし、総裁と副総裁のポストは財務省と日銀出身者が分け合い、そこに学者が加わるといったパターンが多い。

 ECBは過去に例のない国を跨いだ中央銀行だけに、こちらは国同士のパワーバランスが影響する。特に中核国と周辺国が対立している構図となっている。ドラギ総裁はイタリア出身、つまり周辺国から選出されているが、今回、副総裁に周辺国のスペインから選出されたということは、次期総裁は中核国、そのなかでもこれまでいろいろあって総裁を送り込めなかったドイツが、ドイツ連銀総裁のワイトマン氏を送り込もうとしているように思われる。

 中央銀行の金融政策を決めるメンバーにタカ派とかハト派と区別することにあまり意味はないと個人的には思っている。タカ派では緩和をしなければならないときは緩和策に賛成し、ハト派でも正常化が必要となればそれを積極的にすすめる。ハト派とされたイエレン前議長など良い例ともいえる。日銀の政策委員にいたっては、リフレ派かそうでないかとの区分けになっているかのようにも思われる。

 それはさておき、少なくともドイツ連銀総裁のワイトマン氏はタカ派とされているように、ドラギ総裁とは対極的な立場となっている。ワイトマン氏は積極的な金融緩和政策に反対し続けてきた。ドラギ総裁は正常化にも極めて慎重であるが、これがワイトマン氏に変わればこれまでの慎重さはなくなり、正常化を進めてくることも予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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