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今年の金融市場のびっくり予想を総括、日経平均の3万円や米長期金利の3%はあるのか

久保田博幸金融アナリスト
東証(写真:松尾/アフロ)

 今月のこのコラムでは、いくつかの今年のびっくり予想を書いてみた。今回はそれらをまとめて見てみたい。コラムのタイトルは以下の通り。

「マイナス金利政策の修正の可能性」

「もし原油先物が100ドル台回復となれば日銀の物価目標達成も?」

「2018年のビックリ予想、日銀の物価目標達成!」

「2018年のビックリ予想、日経平均の3万円台達成!」

「今年のびっくり予想?米国の長期金利の3%台回復」

 実はこれらはひとつの大前提に基づいた予想となっている。それは世界経済の拡大に伴うものとなる。その前提通りとなれば、これらはびっくり予想というよりも、メインシナリオとなりうる。

 米国の株式市場は主要3指数が最高値を更新するなど絶好調。FRBが利上げをしているにも関わらずである。というよりも、FRBが利上げを含めた正常化に着手できるほど景気が回復しており、それが株価に反映されているといえる。FRBも金融引き締めというよりも、あくまで非常時の対応としていた過度の緩和策からの脱却といえることで、景気も正常化してきたと言える。それが今年は更に拡大傾向にある。

 東京株式市場も世界的な景気拡大を背景に日経平均は1991年11月18日以来の24000円台回復となった。1989年12月末大納会につけた日経平均株価の最高値38915円から、バブル崩壊後の安値が2009年3月10日の7054円。38915円から7054円下落の半値戻しが22984円。つまり23000円を抜けた時点で、半値戻しを達成したことになる。相場の格言に「半値戻しは全値戻し」というものがある。今後、新元号のスタートや東京オリンピックという大きなイベントも控え、このまま日経平均が上昇基調を継続させて、30000円の大台を回復するというシナリオもサブというよりも現状、メインシナリオにもなりうるのではなかろうか。

 この世界経済の拡大とOPECなどの減産などを受けて、じりじりと上昇しているのが原油価格である。原油価格の上昇は物価の上昇要因ともなる。WTIのチャートからは次の節目は100ドルあたりとなり、そこを目指して上昇する可能性がある。

 景気の回復とともに物価が上昇してくれば、正常化に慎重となっていたECBも舵を切り替える可能性があり、資産買入の終了とともに利上げの可能性も指摘されている。

 日本の物価に関しても、内閣府は18日に発表したミニ白書で、需給ギャップがプラスに転じ、企業物価の「消費財」が大きく上がった昨年夏から半年後の今年前半にも物価がさらに上昇するという可能性を指摘している。ここに原油価格の上昇も加われば、消費者物価指数が2%に向けて上昇してくるというシナリオも描けないわけではない。もし1%台後半あたりまでCPIが上昇するとなれば、日銀は引き締め策というより、微調整という意味で、マイナス金利政策の修正などを行ってくることも期待したい。そうなれば銀行の業績にも好影響を与える可能性が出てくることで、株式市場はこれを好感することも予想される。

 世界経済の拡大と物価が上昇するとなれば米国の長期金利は、なかなか上がりそうで上がらなかった次の節目となる3%に向けて上昇してくることも予想される。すでに米国の長期金利は2.62%の節目を突破してきている。米長期金利の上昇は欧州の長期金利にも影響を与えるだけでなく、日本の債券市場にも影響を与えよう。そうなると日本の債券市場も日銀のコントロール下での落ち着いた動きが今後も継続するのかどうかは、かなり怪しくなってくる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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