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「『円』対『仮想通貨』」

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ビットコインの価格が乱高下するなどしていることで、再びビットコインなどの仮想通貨がニュースなどでも取りあげられている。しかし、特に日本ではこの仮想通貨が法定通貨である円に取って代わるような事態となることは考えづらい。

 日本国内での「円」の利用については、まったく支障がない。それどころか日本人は特に現金主義であり、世界的に電子マネーや仮想通貨といった新たな決済手段が広がりつつあるなかでも、日本は引き続き他国と比べて現金を好む傾向が強いとされている。

 日銀が今年2月に発表したレポートによると、日本の現金流通高の名目国内総生産(GDP)比は2015年末時点で19.4%となり、日本の現金流通高のGDP比はユーロ圏の10.6%、米国の7.9%、英国の3.7%など他の主要国と比べて際立って大きい。

 この要因として日銀が指摘しているもののひとつは「タンス預金」として使わないまま滞留している現金が多いこと。日本は治安が相対的に良く、現金を保管しても盗難のリスクが低いこと、低金利が長く続いていることで、預金していても金利収入がほとんど得られないことなどとなっている(2月21日日経新聞記事より引用)。

 もちろん現金に慣れ親しんでしまっていることで、便利とはわかっていても電子マネーよりもつい現金を使ってしまう面もある。コンビニでの利用もいまだ現金の割合も多いようである。

 これは日本の円の決済のしやすさや、その価値が安定していることも影響している。電子マネーは便利ではあるが、ひとつの電子マネーが、すべての店で決済ができるわけではない。

 またビットコインなどを使った際のように、今日買ったコーヒーの値段が明日、大きく変動するようなこともない。

 同じ円で使える電子マネーの普及もなかなか進まないなか、日々値動きがあり、さらにその決算についても一定の手続きが必要な「仮想通貨」が日本国内で通貨として普及することは、円の信認や価値がこれまで通り維持されるという前提では考えづらい。  

 仮想通貨は通貨という名称はついていても、国内では投機的な対象物となっており、ブロックチェーンという仕組みは応用が可能で普及する可能性はあるものの、仮想通貨自体が「通貨」として普及する可能性は極めて低いと言えよう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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