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イエレン議長はあらためて年内利上げを示唆

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 FRBのイエレン議長は26日の全米企業エコノミスト協会での講演で、「インフレ率が目標の2%に戻るまで金融政策を据え置くのは賢明ではない」と述べ、緩やかな利上げが現在のところ最も適切な政策スタンスだとの認識を示した上で、「ゆっくりし過ぎないよう注意するべきだ」と述べた(ブルームバーグ)。

 20日のFOMCでは政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を年1.00~1.25%のまま据え置いた。そして、2008年~14年に購入した米国債などの保有量を10月から段階的に減らすことを決定した。そして、FOMC後に公表した政策金利見通し(ドットチャート)では、参加者16人のうち11人が年末までに追加利上げを予測していることを明らかにした。

 この日の会見でイエレン議長は物価動向について、今後数年で2%の近辺に回復し、安定するという見通しを変えなかった。物価の2%割れは多分にミステリーだとも表現していた。

 26日の講演後の質疑応答でも今年の物価停滞について「謎」と述べていたようであるが(日経新聞電子版)、基本姿勢としては緩やかながらも、ゆっくりしすぎない利上げを意識しているようである。

 これはつまり足元の物価データなどからFRBが予想している今年の年3回目の利上げは困難、との見方を修正させようとの意図があるようである。余程の事態が発生しない限り、FRBのシナリオは12月のFOMCでの利上げ決定とみて良いよう思われる。

 余程の事態としては北朝鮮リスクなども挙げられよう。こちらはすでに話し合いの余地もなくなりつつあり、何かしらのきっかけで軍事衝突を招く懸念がないわけではない。しかし、今のところは軍事衝突に進展する可能性は薄いとの見方も強い。

 物価に対しては原油価格の動向も当然影響を与える。ここにきてWTIは50ドルの大台を回復するなどしており、少なくとも物価を抑制する要因とはなくなりつつある。今後、物価については上昇圧力を強めることも予想され、これは米国のみならず日本も同様であるかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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